もしも、自分が当事者だったら?
テレビのクイズ番組を暴いた作品
クイズで勝ち残っていくテレビショウ。クイズに回答した人が賞金を稼いていく番組なのだが、実はプロデューサーやスポンサーがクイズの勝者を作り出している、という作品。その当時なら、このような番組の裏を暴いた映画に共感できたのかも知れませんが、今の時代からみれば、それが果たして暴く事になるのだろうか?と疑問に思えてきます。番組制作側とスポンサーがテレビ制作に対して番組に注文をする事が、ある程度は仕方ない事ではないでしょうか?番組を提供しているのですから、会社の意向にそった番組制作をするのは、当然です。
確かに、クイズの答えや問題を教えてしまうのは、どうかと思いますが、ある意味テレビというのは、映画や小説と同じで造り物なのですから。例えばバラエティ―番組だって、その場で受け答えをしていますが、その台詞のやりとりにも、シナリオが作られていると聞いたことがありました。今の時代では、制作会社やプロデューサーを暴いたからといって、これほどまで熱くならないなと思いました。
ヴァン・ドーレン役の人間が変化していく様に注目
ヴァン・ドーレン役のレイフ・ファインズの演技がとっても上手いと思います。作品の前半では、有名な親の息子、育ちの良いお坊ちゃま的な雰囲気が出ています。品のいい笑い方や動作、どこか余裕ある趣などは、欲とは無縁の人柄で、誰が見ても、「感じのいい人、好感度が高い人」と感じるのではないでしょうか?
しかし、「クイズ・ショウ」で、不正を働き、自分の手元にどんどんとお金が入ってくると、彼の表情や雰囲気に変化がみられます。どこか怯えて、いつも余裕がない表情に変わり、お坊ちゃま風的な感じが、すっかり抜け落ちてゆきます。人間と言うのは、回りの環境や、自分の行動や後ろめたい事をしていると、だんだんと、人間としての魅力が失われていくのだなと思いました。
ですから、クイズ・ショウで不正し、大金を手に入れた人達は、人間的な魅力を失っていくのは、あたり前なのかも知れませんね。
いったい悪人はだれだったのか?
「クイズ・ショウ」の中で、いったい誰が悪かったのか?と言う事が、テーマの一つにあるのではないかと思います。作品の中で、不正を暴くために捜査を始めますが、クイズの答えを事前に知ることとなった、回答者が悪かったのか、番組の視聴率をとる事を優先し、スポンサーの意向に沿うようにしたプロデューサーが悪かったのか、さらにはスポンサーが自分の商品を売れるようにするために、圧力をかけたことが悪かったのか?
このような、負の連鎖とも言える事が置き、それぞれが不正を行う事となります。「クイズ・ショウ」を暴きたいと思っているデイックは、スポンサーやプロデューサーが一番悪いという事を主張し、そして叶わない結果に終わります。
たぶん、スポンサーやテレビ局の悪さを暴こうとするのが、この作品のテーマなのだと思いますが、私は、あまりその事に共感ができませんでした。テレビのニュースやドキュメンタリーを歌っているのであれば、その真意を追求しなければいけないと思いますが、クイズ・ショウは、いわゆる娯楽番組です。真実を語り、伝え行くという事でなく視聴率をいかに上げて、見ている人を楽しますということに重点を置いているのです。ドラマや映画、バラエティなどのように、演出や創作があり、そしてエンターテイメントが存在できるように作られても、別にいいのではないかと思ってしまいました。
ムダに長い作品。
「クイズ・ショウ」の上映時間は、133分とやや長め、面白い映画ならば苦痛を感じませんが、見ていているうちに少し飽きてきた映画です。登場人物の生活とテレビ、そしてテレビの内側などと、場面が変わるは、新鮮で裏側を知ることもできますが、ただクイズの不正という事しかないので、観ているうちに少し飽きてきます。もう少し、短い方が中身も濃くなり、良かったのではないかと思います。
親子関係が不思議な流れを作る
チャールズと、詩人でチャールズの父との関係が、この作品の中でのポイントのような気がします。言葉や行動などは、ウソや八百長など、いくらでも装う事ができますが、反対に親子関係と言うのは、いくつもの嘘や悪で固めても、その中の愛情と言う真実は、誰にも壊せず曲げられないものではないでしょうか?視聴者に対する嘘や偽りを放つ時よりも、自分を信じ切っている父親に、嘘を言う事が一番辛い。そして、もう父親には嘘を吐けなくなってしまう。そんな人間の根本的な真理が、ここにあるのだと思いました。
そして、父親役のポール・スコフィールドがとてもその父親役を好演しています。ただ、作品の中で息子の映っている番組を「消してくれ」と消させた彼の気持ちは、掴みとることができませんでした。息子のウソを、直感で見抜いていたのでしょうか?
大切なのは断る勇気
会社やテレビ局のせいではないと思います。今の時代でも、自分が勇気を持って断ることができていれば、不正をすることもなく、自分に恥じることなく生きていけるのではないでしょうか?特に、最近の世の中は、そんな事が多いような気がします。
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