平たい顔族と濃ゆい顔族の、時空を超えた(略) - テルマエ・ロマエの感想

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テルマエ・ロマエ

4.134.13
画力
3.17
ストーリー
3.83
キャラクター
4.00
設定
4.17
演出
4.00
感想数
4
読んだ人
10

平たい顔族と濃ゆい顔族の、時空を超えた(略)

3.53.5
画力
2.5
ストーリー
3.5
キャラクター
3.5
設定
4.0
演出
3.5

目次

異文化カルチャーギャップSFファンタジーコメディ

なんちゅう奇天烈な題材の漫画だろう(^_^;) 世界一のお風呂文化を誇る日本と、お風呂に並々ならぬこだわりを持つ古代ローマ人。それを力技で結び付けた漫画がこの「テルマエ・ロマエ」です。そもそも著者のヤマザキマリ氏の経歴が、またなんとも豪快なのですよ。人生行き当たりばったりというか、勢いでなんとかなったというか。その体験をつづられた作品ばかり読んでましたので、実はエッセイ専門の漫画家さんと思い込んでおりました。しかしこの一作で、すっかり有名になってしまわれましたねぇ。特に作中造語の“平たい顔族”は、妙にツボに嵌りました。

10代でイタリアへ渡り、絵画と美術史を学んでおられたヤマザキ氏、当地での貧乏生活の後なぜか漫画家の道へ進まれました。その理由が産まれて来たご子息養育のため。甲斐性のない当時の恋人にとっとと見切りをつけ、友人の力を借りつつ描いたこともない漫画を描き上げ、イタリアから日本に投稿。受賞賞金等で帰国されたとのことです。確かに文筆業ならなにを学んでも肥やしになりますが、そもそも当初はなにを夢見てイタリアへ? 

帰国後は語学講師にテレビ・ラジオ関係の仕事を兼業しながら、漫画の仕事もこなしておられたようです。計画性はさて置いて、この生きることに対する、もの凄く前向きなパワーはどこから来るのだろう(-_-;) その後、イタリア留学時に交流のあった家族のご子息との結婚エピソードがまた面白いのですが、ぼちぼち「モーレツ!イタリア家族」のレビューみたいになってきましたので、この辺で。

古代ローマの風呂事情

物語の舞台は西暦130年代の古代ローマ帝国。14代皇帝ハドリアヌスの覚えもめでたい浴場建築技師のルシウス・モデストゥスは、原因不明のタイムスリップで、世界最高のバス・トイレタリー技術を誇る現代日本に出現します。とりあえず水場が時空転移の触媒ではあるようですが、本当に原因・要因は不明です。強いて言うなら、ルシウス君の風呂建設に対する飽くなき情熱を、神様(ヤマザキ様)が面白がってくれたのでしょうか。

見た目は美術室の彫刻デッサンモチーフなルシウス君ですが、その生真面目頑固気質はまんま日本職人です。度々のタイムスリップにも臆せず、日本からオーバーテクノロジー(風呂関係に限る)を元の時代に持ち帰り、次つぎ建造したトンデモ浴場の斬新さは彼の名声を高めます。その仕事ぶりと男っぷりがますますソッチの気もある皇帝に気に入られ(ギャー)、職務にかまけて家庭放置。言いたかないけど社畜お疲れさまなルシウス君、妻から愛想つかされて一方的に離縁され、晴れてますます仕事人間に(/_;)

と、まあこんな感じで主人公は過去と未来の往来を繰り返すのですが、一体ヤマザキ氏はどうこの物語を締めるのだろうと、失礼ながら興味津々だったのですよ。なにしろこの展開を繰り返すとマンネリ化してしまいますから。単行本2巻発刊の頃は作品の知名度も高まり、性別年齢の嗜好を問わない作風も相まって、ヤマザキ氏ご自身メディアの露出も増えておられたような。しかも無謀と思われた実写映画化まで…開き直った日本人キャスト起用がかえって話題となっていましたが。しかしよくもまあ、あそこまで濃ゆい顔の日本人俳優を集めたもんですよ(・_・;)

唐突ですが、愛は時空を超えた

さて、日本の湯治場から家庭風呂、バストイレタリー展示場から温泉地まで、さまざまな場所に出没し、地味に騒ぎを起こしたルシウス君の物語も佳境に入ります。それまで単発エピソードでまとめられていたテルマエですが、4巻にてヒロインが登場していよいよ最終章へ。古代ローマ文化に傾倒した歴史学者の“小達さつき”さんは、美人で才女で実家の温泉地では芸妓もこなす大和撫子です。物語を収束させるため、これでもかとスペックを搭載させたヒロインを送り出し、さあいよいよ最終決戦だ!……盛り過ぎですよヤマザキさん(´・ω・;)

作中で初めてルシウス君と言葉を通わせた語学堪能なさつきさんは、これも初めて彼の出自に疑問を持った人物です。そう言えば様々な場所に出没していたルシウス君、観光旅行の迷子の外国人と思われていたんでした。当地住民の人の好さにも助けられ、警察に通報されるでもなく異文化技術を堪能し、それまで短時間で元の世界に戻れてたんですから。そしてなぜか今回はなかなか帰れないルシウス君、温泉旅館のご厚意で初めて平たい顔族の国に寝泊まりし、更なるオーバーテクノロジーに遭遇します。

あれやこれやでさつきさんとの間に愛情も芽生え、どちらかが元の世界を捨てる状況も整いました。そしてさつきさんがお爺さんの後押しで古代ローマ世界に片道旅行、物語はめでたく大団円へ。実はルシウス君が持ち帰った現代技術が、オーパーツとして発掘される展開を期待していたのですが、やはりやってくれましたよ。それも牛乳瓶のフタ開けその他とか( *´艸`) 無粋を申しますと、その後タイムスリップ癖は治ったのかとか疑問があったのですが、神様が役目を終了させたのでしょう。

この最終章、当初は無理やり感があったものですが、人情物語ありアクションありロマンスありで、よくよく考えれば内容的に実写映画向けではありません? よし、「テルマエ・ロマエ真実の完結編」を制作するんだ! そしてヤマザキ氏にもう一回映画原作料の100万円を!……芸能界って本当にアレな世界ですね…(´・_・`) 

ともあれ長期にわたるストーリー漫画を終えられたヤマザキ氏、思いもかけない大きな反響を呼んだ作品に振り回された時期もあったようですが、世界各地を飛びながらもマイペースで活動されておられるようですね。漫画ではパワフルな印象ですが落ち着いた感じの女性で、今でも時々テレビ番組でお目にかかっています。

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