大渡海の完成から描かれた人間物語り。 - 舟を編むの感想

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舟を編む

3.753.75
映像
3.50
脚本
4.25
キャスト
4.50
音楽
3.50
演出
4.75
感想数
2
観た人
2

大渡海の完成から描かれた人間物語り。

4.04.0
映像
4.0
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
3.5
演出
5.0

目次

言葉の意味について考えさせられる作品です。辞書を作るのに28年もかかる?

辞書を作る作業から、人と関わりたいというところまで繋がります。辞書のことを舟と例えるところが非常に面白く分かりやすいと思いました。舟に乗って人への繋がりをつくるのです。

辞書を作る作業に配属された男性まじめが、言葉について考え始めます。沢山辞書を買ってきた際に、渡海の辞書を作るんだといいます。私にはこの言葉に興味を持ちました。

渡海の辞書とは何なのだろう?舟を海に渡らせて、人と人を結び、繋げていくということだそうです。そんな人間関係も描かれている作品です。

一から辞書を作る大変さも知りました。辞書わわ作るのに28年もかかったという話を聞いて、辞書作りの偉大さに心が惹かれました。28年もかかっていたら、周りの環境は変わっているだろうし、偉大な仕事です。普段使っている辞書も人々が苦労して作ったものなんだなと感心してしまいました。1つの事に何十年も力を入れて働く姿はとても素敵です。そんな生き方が羨ましくも見えました。これは他のことにも置き換えて考えることが出来るとおもうのです。勉強、部活、仕事なども1つの事に取り組む姿勢が大事です。改めて感じることが出来る作品だと思います。1つの事に取り組む事に疲れたらこの作品をみて励まされると思います。

1つ1つの言葉の意味

まじめは、営業には向かない性格です。退社する先輩から、まじめの辞書を作ってくれと言われ、更に前向きに取り組み始めるのです。辞書作りはとても難しく、厳しく、1人で出来る仕事ではないので、職場での人間関係に困ってしまいます。そこでまじめは努力をし始めます。

まじめはかぐやという女性に恋をしたきっかけで、”恋”という言葉の意味を職場の先輩に任されることになるのです。自分が恋愛をして、自分の言葉で恋という言葉を説明する、私からしてみたら素敵だなと思いますが、実際に任されたらとても難しいことかもしれません。そんな中、任された辞書作りが中止になるかもしれなくなり、まじめと職場の同僚たちは焦り始めます。最初は、まじめは付き合いづらいと言っていた同僚が、少しづつ心を開いていくのです。そんな人間関係にも注目したい作品です。同僚が辞書編集部をやめるという話を聞いてまじめが駆け寄るシーンが印象的でした。男同士の友情は深く時には切ないものなんだなと感じました。

まじめがかぐやに直接告白をするシーンがとても好きです。両思いには見えなかったので、個人的にはこのシーンが大好きです。あれ程悩んでいたまじめが、実は両思いという展開にはびっくりしました。結婚までするとは思いませんでした。

大渡海の完成に向けて、成長する人々

まじめが主任となり月日が経ったことを意味し、辞書も出来上がってきます。この時点で13年経過してます。この作品は1つの辞書を作るという作業を描く中で、何十年もの時の経過があります。まるで辞書を作る作業のために生きているかのような人々は、とても輝いて見えました。何かに夢中になること、それによって繫れる人間の絆がこの作品には込められています。沢山の人々によって作られる辞書、大渡海。見ている私まで作業に協力したくなるくらい、皆が真剣に眠気と戦い、取り組んでいました。真剣な姿は、とても輝いてみえ、協力して作ってきた人々が羨ましくも思いました。1つの作業が終わった時は心の奥からおめでとうございますという気持ちが舞い上がってきました。まだ完成ではないのに完成したかのような気持ちになってしまいました。

亡き上司からの手紙と辞書完成によって得た強い絆。

職場の上司の病気が見つかり、しかもガンであることからまじめは、辞書の完成を急がなくてはという思いになりました。きっと上司の方に完成を見せてあげたいという気持ちだったのだろうと思います。上司の方は亡くなってしまいます。まじめは間に合わなかったと、悲しい気持ち、残念な気持ちでいっぱいだったのだろうと思いました。辞書が完成しても元気がなく、上司の写真を眺めて肩を落としていた姿が印象的でした。自分の力不足であったというのです。しかし、亡くなった上司からの手紙にとても助けられたことでしよう。

忙しくてもかぐやにいつもありがとうございますと声をかけたまじめは、本当に真面目な方で妻思いなんだなと思いました。忙しいなかでも妻を思いやることが出来るまじめがとても素敵にみえました。仕事が忙しいと家では無口になる人は多いはずです。会社では気を遣い、家では何もしないという旦那さんがいる中で、この作品の主人公まじめは、本当に心が綺麗な人で頑張り屋です。かぐやもまじめを支え続けました。辞書完成に向けて生きてきたまじめ、それを支える妻、2人は理想的な夫婦であると思いました。辞書完成を通して何十年も多くの人々が関わり、繋がり、絆を生んだことを証明できた作品です。舟に乗り、海を渡り、人と人との繋がりを言葉からでつなげていくのです。1つのことに集中して取り組んだ姿は、まるで大きな海のように広く、人を乗せる舟のように逞しく強いと感じる作品でした。

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