満たされた気分になるミュージカル映画 - 魔法にかけられての感想

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満たされた気分になるミュージカル映画

4.64.6
映像
4.5
脚本
4.8
キャスト
4.3
音楽
4.5
演出
4.3

目次

大人に見て欲しいミュージカル映画

2007年に公開された大人でも楽しめるディズニー作品。映画の最初はアニメですが、すぐに実写となり、お姫様が王子様を探しに行くストーリーとなります。

王子とお姫様、ディズニー、ミュージカルと子供向けの映画と思われますが、大人でも十分に堪能でき、大人にこそ観てもらいたい映画。おとぎ話から出てきたジゼルは、永遠の愛を信じ、悪い人などいないと信じています。現実には、そんな事があるはずありませんが、本当はそうやって生きられたらどんなに楽でしょう。人を信じて疑わない、誰もが善良となったら、優しい気持ちになり戦争も起きないかもしれませんね。

そんな、ジゼルを「魔法にかけられて」では、滑稽な出来事と、楽しいミュージカルで明るく表現しています。ジゼルは歌を歌えば、なんでも叶うおとぎの国の人なのですからね。

しかし、それだけで終わらないのが「魔法にかけられて」の良いところです。なにも知らなかったおとぎの国の人達が、こちらの現実の世界を生きる事で、様々な事に目覚めていきます。私達には、うんざりする程のあたり前の世界ですが、ジゼルはそれを楽しんでいるのです。自分が、初めて怒る気持ちに感動し、デートをして愛を育む。「こんな素晴らしい事があるのね」と、言っているみたいです。

大人になって、何もかも知っているようで、大事な何かを忘れてしまう私達に、問いかけています。

ゴキブリ達のお掃除が最高

ジゼルは、ある意味呑気なお姫様です。歌を歌えば、小鳥やウサギ達が彼女の回りに集まり、お掃除やお片付けをしてくれるのです。しかし、ニューヨークにはウサギも小鳥もいません。そこで、どうするのかと思ったら、なんとゴキブリやネズミ、ハトが部屋を掃除し片付けを始めてしまうのです。観ていてあまり気持ちの良いものではありませんか、その発想の豊かさと演出に感動せずにはいられません。素敵なお姫様には、間違いないのですが、今まで見たこともない演出です。

都会には、確かにゴキブリ、ネズミ、ハトがいます。それらに掃除をさせ、お茶碗を洗わせると考えられない場面ですが、なんだか知らないうちに納得させられてしまう場面となっています。

脇のストーリーも面白くて外せない

「魔法にかけられて」の本筋は、ジゼルが王子様を探すのですが、それ以外の小さなストーリーもとても面白い切り口で描かれているので、見過ごさないようにして下さい。

一つは、離婚の相談をしにきた夫婦に、ジゼルの言った一言で、再び愛を取り戻す事になります。彼女のこんな素敵な人と別れるなんてと、別れようとした夫に彼女の良さを訴え、それが通じて元のさやにおさまるのです。ジゼルは、私達が忘れがちになっている大事な心を呼び覚ましてくれる存在なのです。

もう一つのお話は、ジゼルが探していたエドワード王子が、ジゼルではなくロバートの恋人であるナンシーと愛する事です。キャリアウーマンを装っていたナンシーですが、実はロマンチストな彼女の気持ちをゲットしてしまうのです。つまりは、彼氏と彼女の交換です。これはいくらなんでもありえないでしょうと思われますが、ジゼルが言う真実の愛の形なのだと、納得させられました。

母親がいない共通点

ジゼルは、ロバートの娘であるモーガンと心を通い合わせます。小さな女の子が、美しいお姉さんに惹かれて行くのは、当然の形なのですが、2人の共通点は母親がいない事です。ジゼルは、悪い継母に育てられましたが、心がキレイであるために、意地悪をされたとか悪い事をされたとか感じません。もしかして、人を憎んだり恨んだりする人は、憎しみを多く感じ、人を愛したり優しくする人は、同じような態度を取られたとしても、それを好意的な態度ととるのではないでしょうか?

ジゼルとモーガンの仲の良さは、見ていても心地よく、それでいて滑稽な場面もあり飽きさせないのです。また、母親のいない2人の寂しさにも、共感でき心を熱くさせます。

ミュージカルが嫌いですか?

「魔法にかけられて」はミュージカル映画ですが、ミュージカルが嫌い、苦手と思っている方でも、さほど気にならないミュージカル作品となっています。特に言えるのが、わざとらしくない歌です。台詞をメロディに乗せると、わざとらしい感じになってしまいますが、この作品では感じません。歌を楽しみながら画面でも楽しませてくれます。おとぎの国から来た人達は、とりわけ歌が好きなようですね。

舞踏会の演出に驚きだが…

おとぎの国から来たお姫様との恋愛物語として終わりを告げるのかと思っていると、最後にエンターティメント性の高い場面も楽しむことができます。悪い女王が大きな化け物になるのですから驚きです。

しかし、ここまでしなくても良かったのでは?と疑問も残ります。ジゼルとロバート、娘のモーガンの話だけで十分なのに、この大きな化け物みたいのが出てきて、「あっこれは映画だったんだな」と我に返ります。演出としてさらなる盛り上がりを狙ったのでしょうが、今まで築いていたお話が半減するように感じました。ハラハラドキドキのようなスリリングは、いらないのではないでしょうか?

最後はアニメで締める

物語の最後はアニメで終わります。ロバートの婚約者がおとぎの国へと言ってしまうのですが、そこにまで携帯電話がかかってくるのです。これは現代人に対するちょっとした皮肉かもしれませんね。携帯電話に追われている毎日、何が大切で何がいらないのか、わからなくなって、全てを欲しがってしまう。物がたくさんある事で、安心し満足を得るこんな時代に、バキッと折った携帯が疑問を投げかけているように見えました。

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4.54.5
  • a_sa_s
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