高校生らしい恋 - プリンシパルの感想

黒王子と白王子

高校生らしい恋愛漫画です。王道な設定で、人気の高い男の子が学校に2人います。そしてひょんなことから転校してきた主人公が好きになってしまい、主人公を取り合うわけではないのですが、淡い恋心を抱きます。とても読みやすく、絵のタッチも今風というか、ポップに描かれて最近のいくえみ先生の乙女感がだいぶ強いなあと思いました。

そしてずいぶんと人気を博したらしいですね、黒王子こと和央と白王子こと弦。私は完全に和央派です。可愛らしい外見で、雰囲気も柔らかくて、でもなよっとしていないロールキャベツ男子。相手をよく見てそのときに一番適した言葉をかけてくれます。私は結構彼に癒されました。弓ちゃんと末長く幸せでいてほしいです。世界に弓ちゃんしか女がいないなんて、そんな風に私も言われてみたい。意志が強くて決してブレない姿勢に男らしさを感じました。

弦は小さい頃に知り合った和央を女の子だと思い、小さな恋をします。小学校に上がりランドセルが黒いことから和央が男の子だと気づくのですが、そこから恋愛下手になってしまったのでしょうか。鈍感で、幼稚で、和央を中心に生きてきてしまったため他人を受け入れないような姿勢でいます。そこに登場した主人公に惹かれるのですが、その惹かれるスピードがカタツムリ並みに遅いため、本人はまーったく自覚しません。その鈍くて純粋なところが白王子と言われる所以なのですが、うーん、罪な男。でも要所要所で主人公に見せる態度が男らしく、発する言葉に包容力があって、天然でここまでイケメンになれるなんて、やはり、弦は罪な男です。

女の戦い

弦と和央はみんなのもの、という暗黙の了解を知らない主人公は2人と朝登校するほど仲良くなります。女子のリーダー的な位置にいる晴歌は2人に近づく女子を軒並みなぎ倒すため、当然主人公もその洗礼を受けるわけです。恋心ってもっと女の子を綺麗にするものだと思っていたのですが、改めて醜い争いを起こす火種になるんだなと再認識しました。もっと自分を磨く原動力にしてほしいですね。でも、努力をしてもなんの発展もない関係で、後から出てきた主人公がいとも簡単に自分がなりたかった位置に行ってしまうんだから、それは悔しかったんだろうと思います。私は逆恨みにあった経験があるので、男に言えよ、と少しイラッとしました。だって、主人公へ嫉妬の気持ちをぶつけても、自分の場所が動くわけでもないんですから、無駄な労力だなあと。女同士の妬み僻みは馬鹿馬鹿しいですね。その主犯であった晴歌も弦と付き合い始めて嫌がらせに遭います。自分のしてきたことだから、とその嫌がらせを受け入れ、耐えます。因果応報ですが、主人公は心からの謝罪を晴歌からされ、友人関係はここでひと段落します。やはり同じ立場になって、プラス自分の気持ちが落ち着かないと、女性って目が覚めないんですかね。恋って怖いですね。

それぞれの収穫

主人公は弦に告白をするのですが、あっさりフラれます。それも白王子の特権ですね。自分の気持ちに終盤になっても気がつかなくて、東京の大学進学を決めている主人公と離れることがうっすら寂しいなあと思っても、なんでだろう？と疑問に思ってしまうんです。純粋無垢は時に残酷です。和央は弓ちゃんとしっかり愛を育んで、先生と生徒という立場で脅かされる関係を必死に守ろうとします。和央を見て一緒に育ったのなら、少しくらい女性の扱い方や興味を持ってもいいんじゃないかな、と思いました。でも、その純粋さがなかったらきっとただのチャラ男になっていたことでしょう。だから弦はいいのかな？

しかし、どうして主人公に会った途端恋に目覚めるのでしょうか。晴歌と付き合った時にもしそばに主人公がいなかったら。主人公のお父さんと和央のお母さんが再婚しなかったら。

まず、再婚したことによって和央への依存が少しばかりなくなると思います。和央のことだけを考えて生きてきて、きっと自分の気持ちと向き合うということに意識を向けずに生きてきたんだと思います。だからここまで鈍感な白王子が誕生したんだと考えます。さらに、晴歌と付き合うことによって、男と女ということを自覚したんだと思います。生々しいですが、女として女の子を見るということを晴歌で勉強するんですね。で、その勉強でわからないことがあると和央ではなく、主人公に教えを請います。嫌がらず何かしら教える主人公に親近感が湧くんですね。安心、かなあと思いますが、弦が和央といることで得ていた安心が、親の再婚で揺らぎ、ふらふらと意地を張って拗ねて、そして気がついたら主人公のところまで辿り着いたんですね。足元が透けて下が見えるところでいつまでも立ち止まっていられません。主人公が現れた時期、現れたからこそ動いた現状、全てが主人公と弦が結ばれる要因になったんだと思います。そして、それぞれが学ぶんですね。

学校でハブられて嫌になったから父親の元へ引っ越した主人公糸真は、逃げずに勝ち取った友人関係があり、和央は義理ではありますが父親と、幼い頃から持ち続けた弓ちゃんへの想いが実ります。弦は自分の気持ちを自覚する経験をして、晴歌は今までの自分がしてきた嫌がらせが身に降りかかったことで罪悪感を得ます。

みんなそれぞれが落ち着くところに落ち着いて、ああよかった！という腑に落ちる終わり方をしています。高校生でこんな青春をしたかったなあと、羨ましくなりました。