主人公に誰だってなりたい - プリンシパルの感想

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プリンシパル

4.004.00
画力
3.83
ストーリー
3.83
キャラクター
3.83
設定
4.00
演出
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主人公に誰だってなりたい

4.04.0
画力
4.0
ストーリー
4.0
キャラクター
4.0
設定
4.0
演出
4.0

目次

まさかのヒロイン部外者

糸真は実の両親が離婚し、母親に引き取られて東京で暮らしていたが、度重なる再婚、女子校でのいざこざに、どことなく家に居づらくなってしまった。そのため仕方なく札幌の父親のほうに引き取られて、札幌で新しいスタートを切ります。とにかくハブられたくはない。安全に、落ち着いて暮らしたい。そう思っていたけど、ご近所だった和央や弦と仲良くしてしまったばっかりに、またもや落ち着いてはいられない展開になっていく…

ヒロインである糸真が、最後の最後まで居場所がないんです。これは少女漫画としては珍しいですよね。まさか離婚して独り身だった父親すらも、和央の母親に一目ぼれして結婚するなんて…和央と付き合うのかと思っていたら姉弟になり、ちゃんと仲良く家族を始める。一つ屋根の下で深まる愛っていうのがよくある話だけど、この物語においては完全に家族。独り身だった者同士、夫婦になっていくのがとても微笑ましく、糸真もそれを受け入れて、和央も受け入れていました。じゃー糸真は弦と付き合うの…?って思っていたら、親友の晴歌が弦のことをずっと好きで、弦と付き合い始めた。…あれ?糸真はまた、一人だね…いや、家族ができて、決して一人ではないと思うし、誰かとお付き合いをしていないなら主人公にはなれないってことはないと思うんだけど…糸真自身も、自分の気持ちには最後まで気づいていなくて、ずーっと自分に足りないものを探してる。その姿は割と共感できましたね。みんなが持っていて自分が持っていないと不安になったりするのはよくあること。そして誰もが幸せになりたいと願っているのも当然の事だから。

和央と弓ちゃん

和央と弓ちゃんが…両想いだったのは衝撃的でした。和央の片想いで、結局糸真とくっつくんじゃないかなーと予想したときもあったのでね。小さなころから好きで、やっと手の届くところにきた。和央にとってはなんて嬉しいんだろうね。弓ちゃんはお見合い結婚からの出戻りなうえに、和央とは教師と生徒の関係。ご近所さんではあるけれど、どう関係性をつくっていけばいいのか、わからなくなっていました。そりゃそうだ。歳の差・ご近所・禁断学校生活とくれば、もうドロドロしか見えないもの。で、もろもろ糸真の協力もあって、ちゃんとお互いの気持ちを伝え合い、付き合い始めることができてよかったね。私としては、弓ちゃんのぽっちゃりがどうにも気に食わなかったんだけど、ちゃんと一人暮らしをはじめて、ダイエットして痩せて。和央に見合うようにがんばる姿がかわいらしかったな…で、キス現場を写真に撮られて学校に貼りだされたのに、そのかわし方が

キスは茶飯事です

って…え?いいの?なんだこの学校…

で、主人公の糸真はどうしたかっていうと、普通に元気そうだった。もはや和央に対する気持ちって恋だったのか、ただの興味だったのかすらわからない。でもこっちから見てれば、どっちに支えられていたのかって考えたら、弦なんだよね。本人気づいてないが。弦も全然気づいてない。あーでもやっと手に入れた晴歌という親友すら、失うのかなー…って思ったら、気づかずにいたほうが幸せかなーとも考えたし、弦がこのままなぁなぁで付き合い続けるのもしっくりこないし…和央と弓ちゃんはすっと決まってうらやましい。

親友と弦

晴歌がずっと好きだった弦。誰も近づけないためにハブをつくることだっていとわない。でもね、こういうやつって結局損するんだよね、だいたいの漫画で。案の定、晴歌は弦と付き合っても、弦が自分を好きになってくれることはないんだなってわかるだけだったという…つらいお別れでした。せっかく念願かなって付き合うことができたのにね…しかも、糸真が弦を好きになっていたということを自覚して、それを晴歌に言えないでいることも、気づいてしまった。でも本人から直接言われてないから。まだ信じてない。これはちょっとかっこよかったよ。噂や他の人がどうこう言うのよりも、お前の口から直接言ってこいっていう男気を感じちゃいました。そしてようやく糸真も

弦が好き

と口に出すことができた。お互い、ばーか!と連呼しまくりながらも、お互いの弱い部分を理解しあった大切な友達にすでになっていたから、揺るぎませんでした。今までだったら逃げていたかもしれないけれど、絶対に失いたくないものができたから。糸真も成長しましたね。いざこざを避けるのではなくて、自分が居たいと思う場所を手に入れるために、敢えて困難に立ち向かおうとする姿、素敵でした。親友と同じ人を好きになってしまうってやつ、ありきたりでちょっと嫌なんだけど、はじめに親友が意中の人と付き合っちゃって、主人公は横で見ているだけだったという設定は、割と新しくて面白いと思いますね。親友にどこか悪いところがあるわけでもなし。自分も祝福できる。でも何だろう?自分はどこにいて、何をえらそうに、この幸せな人たちの中にいさせてもらっているんだろう?糸真の気持ちも、わかるんだよね~…

最後までわからなかった

糸真は晴歌の紹介で知り合った奴とお付き合いを始めたけど、やっぱりなんか違くて。優しくてちょっとずつ仲が深まっていくのに、はっきり自分の気持ちを表すこともできない。これって相手にとってみればかなり失礼だよね…そして、糸真はその相手にお別れを告げて、弦に告白したけど、さらっとフラれて。俺は今慎重な男だからとかなんとかで。そりゃ晴歌の気持ちも考えた彼なりの優しさだったりしてね。そんなツンデレだから女子を虜にするんだよね。強引でうるさくて、なのに時々ドキッとさせるくらい優しい。知らない間に押し引きを自然とやっている男。罪だわーと思います。だから、

俺 おまえいないとつまんないみたいだ

あーー普段ほとんどデレない男の、最高のデレ。これで今までのお互いのモヤモヤがすべて解消された!やっとかよ!笑顔にドキッとか、なんかかわいくてとか、糸真と弦の関係性はそんな一瞬で作られたものではない。お互いが和央のために、周りの人たちのために、そしてお互いのためにがんばっていろんなことと向き合ってきたからこそ、いいところも悪いところもいっぱい知っている。誰より君を心配しているよ。そして大切にしたいと思っているよ…ようやく自分が主人公になれた気がした糸真なのでした。

みんなが主人公

てかみんなが主人公でいいじゃないか、と思うわけですよ。誰かと付き合っているから幸せだとか、居場所があるとかないとかじゃなく、どれだけ正直に自分らしく、嘘をつかずに生きているかってことが大事だと思いましたね。そうすればおのずと自分で行動する力が湧いてくるし、自分が独りぼっちかもしれないなんて考えることもない。糸真が弦と分かり合えて付き合うことができたからやっと主人公っぽくなれたと簡単には言いたくないじゃないですか。恋人になれたら、結婚できたら、そんな簡単にゴールはやってこない。いつでも自分は自分の事で精一杯で、自分を幸せにしてあげようとがんばっている。それだけで十分主人公っぽい。それに気づくまでのお話なんですよ。悲観することをやめて体当たりで正直になれたときから、もうちゃんと物語は動いているんだなーとしみじみ考えちゃいます。

愛してもらいたいと思うなら、自分から正直に相手を愛そうと思うことが大事だし、いつも誰かからもらってばっかりじゃダメなんですよね。どれだけ自分から動いていけるか。これがプリンシパル。

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糸真がヒロインになれるときがくるのか

分析しまくってたらいつの間にかはじかれてる糸真はどうしようもない奴だった。これは間違いないことである。人からハブられたり、自分の居場所がなくなることはもちろん悲しいことだ。逃げて逃げて逃げまくって、和央にも弦にも迷惑かけまくった。お父さんの再婚だって、どっかで認められない気持ちがあって、和央と弓ちゃんのことだって、自分の癒しがとられたような気持ちになる。自分が一番じゃない悲しみばかりが感じられてしまう糸真。言いたいことを言うだけの勇気があるくせに、傷つくのは怖くて…人の事を考えているようで、自分の事しか考えてない。そんなんじゃ、人は離れていくんだよ。それでも優しく包んでくれた人がいる。糸真は自分と向き合って、家族になった和央を受け入れるのだ。そもそも、和央に抱いていた感情が恋だったのかもわからない。初めて自分の居場所だと思えた場所が、そうだったと錯覚させていただけかもしれないのだ。もち...この感想を読む

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