かの人や月のあらすじ・作品解説
かの人や月は、集英社の「別冊マーガレット」2003年7月号から、2005年7月号まで連載されていた、「家族もの」を得意とする、いくえみ綾の少女漫画である。 三世代家族と犬、猫と暮らす大家族の羽上家の、日々の出来事をつづった物語である。会社員の長男顕、大学生の長女ひろの、高校生の次女ほのかを中心にしたエピソードを、いろいろな人の目線で語るという特徴的な手法で描かれている。性格の違う三人の、それぞれの恋愛模様や周りの人との関わりを、丁寧な心理描写と安定した作画力で表現している。いろいろな思惑や、きれいごとではない部分も、最終的には家族のあたたかさに結びつけていき、優しい気持ちの読後感になれるということが、多くのファンを引き付けている。連載ものではあるが、一話完結的な流れで、オムにパスともいえる形式の漫画である。 単行本は、2004年から2005年にかけて、「マーガレットコミックス」として、全3巻が発売されている。
かの人や月の評価
かの人や月の感想
家族の在り方から自分の生き方を考えてみる
優しくそれぞれの成長を描く主人公のひろのは大学1年生。といってもまだ18歳でピッチピチ。実家から大学へ通うという、まだまだ垢抜け切らない感じのシャイな女の子で、人と関わることが苦手だからと避けてしまう子だ。しかし、心は優しい女性であり、よく気が利く人だ。人を嫌いなのではなく、怖いからこそ、よく観察して、注意深く接している。そんなひろのに惚れた深町。きっかけは大したことじゃない。ただ、話しかけてみたら、もうずっきゅんと落っこちてしまったのだ。気づいたら、もう大好きだった。ひろののダメなところも、いいところも、全部を愛しく思える深町と出会い、ひろのが少しずつ心を外向きに開いていく姿が微笑ましい。何より、この物語において欠かせないのが「家族」の存在。2世帯で暮らしているひろのの実家では、母、父、祖母、祖父、妹、さらには社会人だった兄も帰ってきて、すっかり賑やかになる。そこに深町が入り込んで、当...この感想を読む
毎日は当たり前ではないことの積み重ねと知る
オムニバス形式で同じ時を追うひろの(18歳)は大学1年生。実家から大学へ通う彼女は、少し引っ込み思案で人と関わることを避けるところがあるが、とても根が優しい女性である。そんな彼女の家族はちとうるさい。兄の顕(社会人)、妹のほのか、お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、飼い犬のコマル、そして飼い猫のポセイドン。当たり前のように怒ったり、笑ったり、泣いたり。それが繰り返されていく日常の中で、誰かの命や、これからの未来を、家族一人一人が考え始めた。そんな時期を描いてくれているのがこの物語ですね。主に顕、ひろの、ほのかに関係するものになっていますが、それらが家族を通して密接に関わり、動いていくのだなーと考えさせてくれる、そんなお話に仕上がっていると思います。物語の始まりはひろの視点。深町という同級生に言い寄られるところから始まって、人とあまり関わろうとしてこなかったひろのの世界が少しずつ...この感想を読む
いくえみ版ちびまる子ちゃん
羽上家の日常この話は羽上家の家族の日常生活を描いています。しかし、描き方が巧妙で、それぞれの家族に関わる人々がどう羽上家に馴染んでいくか、関わりを持つようになるのか、という短編がたくさん集まった作品になっています。それはもうキャラクターの濃い住人の集まりですから、これはもういくえみ版ちびまる子ちゃんだなと。自分でこの例えの的確さにびっくりしました。すべてが同じというわけではなく、三世代家族が珍しくなった今日ではちびまる子ちゃんやサザエさんがイメージしやすいなというだけで、話の内容は女子力高い恋愛漫画になっています。主人公という主人公はいませんが、長男の顕は頭脳明晰でルックスもよく、小学生の時からモテていました。長女のひろのは人と接することが苦手で、周囲に合わせて行動することを嫌います。なかなか難しい性格の持ち主です。次女末っ子のほのかは今時の高校生でおしゃれも恋も楽しんでいます。この兄...この感想を読む