自分が刑事としてどう生きるかを確立できていない人物を主人公に据えて、事件にかかわる過程で成長する様を鮮やかに描いた「同期」
警視庁捜査一課に所属する三十二歳の刑事・宇田川は、同期の公安刑事・蘇我を内心密かにライバル視していた。ところが、その蘇我が、突然懲戒解雇となってしまう。通常、警察官が懲戒解雇される場合は、何らかの不祥事が絡んでいるため、その不祥事が大々的に報道されることが多い。しかし今回は、解雇理由が公けにされていない。不審に思った宇田川は、人事部門に理由を問い合わせてみたが、蘇我の経歴は既に警察内部から抹消されていた。おまけに宇田川は、公安から目を付けられてしまう。そして事件は起きた。暴力団の構成員殺害事件の容疑者として、蘇我の名前が浮上したのだ。いくら何でも状況が怪し過ぎる。宇田川は、蘇我を助けるために行動を開始するのだが--------。今野敏の警察小説は、これまで主人公にベテラン警官を配することが多かった。彼らは既に警察官としての個性を確立済みであり、それを活かして、いかに事件に挑むかが読み所となって...この感想を読む
4.04.0
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