少女七竈と七人の可愛そうな大人の評価
少女七竈と七人の可愛そうな大人の感想
美しい少女をいかに美しく描くか
美少女と小説桜庭一樹の作品といえば、大変美しい少女が主人公であることが少なくありません。『GOSICK』シリーズのヴィクトリカは誰もが人形かと見紛う絶世の美少女ですし、『私の男』の腐野花や『ファミリーポートレイト』のコマコなどは他の同級生と一線を画す大人びた魅力を持ち合わせていました。しかし本作『少女七竈と七人の可愛そうな大人』では、その美しさ故に他を狂わせるほどの美少女が現れます。それが七竈です。小説の主人公にここまでの美少女を持ってくるというのは、ある意味とてもリスクのあることです。ライトノベルであれば、誰もが惚れてしまうような美少女が登場するのは定石であるとも言えるでしょう。コミックでも、学校一の美少女、他の学校にも名が知れるほどの美少女は枚挙に暇がないほど存在します。ですが大衆文学においては、そこまで美少女を登場させるというのはあまりに安易な設定と思われてしまう恐れがあります。それゆ...この感想を読む
美しいということの難しさ
この本で特にいいと感じたのは、キャラクターの面白さです。それぞれにしっかりとした輪郭があり、最後までぶれずに突き進むところが素敵だと思います。わたしは、元警察犬で現在は川村家の飼い犬となっているビショップの語りの部分がとても楽しく読めました。キャラクターがしっかりしていることの大切さを感じさせられました。 さて、物語では主人公の川村七竈の、美しく生まれてしまったことに対する苦悩などが描かれています。七竈の親友である桂雪風という少年もこれまた美しい容姿を持ってこの世に生を受けてしまったわけなのですが、この二人よりむしろ中盤から登場する後輩・緒方みすずの存在が気になってしまいました。緒方みすずは、七竈と雪風の美しさに魅せられていく平凡な女の子なのですが、七竈とのやり取りがなんだか不思議で面白いです。 物語の主題は、血の繋がりと恋、だと思うのですが、わたしはとにかく緒方みすずがお気に入りです。