小川洋子 その不思議世界の変遷
小川洋子作品中トップクラスのエンタメ作品!小川洋子という作家は元来、話を無理に盛り上げず、展開よりも文章力で読者を引き込む小説家だ。しかし本作はどうだろう。意外な展開が数多く仕込まれ、史実をふんだんに取り入れたサスペンス要素もあり、見え透いた小悪党が登場し、主人公の恋愛までも描く、というかなり大衆小説的まとまりを見せている。考えてみれば主人公以外のメインキャラは、悲劇の皇女を装う老婆、偽善者然とした剥製ブローカー、脅迫性障害を持つためドアの前で回転し続ける青年、と、なんとも怪しげな人々ばかりだ。三谷幸喜監督、深津絵里主演で映画化しても結構といけるかもしれない、と思えるほど胡散臭い面々である。ドタバタコメディでも始まりそうなキャスティングだが、そこは文章職人小川洋子、きちんと我々を彼女独特の不思議空間へいざなってくれる。以下で詳細に分析してみよう。 この作品の位置づけ本作は朝日新聞出版社...この感想を読む
4.04.0
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