ぐるぐるまわるすべり台の評価
ぐるぐるまわるすべり台の感想
大人だと分かるような空気感を感じる本。
読み終わった感想は、中村航さんらしい本だったな、ということ。起承転結があるわけではなくてある一時期の、ある感情を綴った本、という感じ。大学を中退し、教え子の名前を騙ってバンドメンバーをつのる。そうして彼は、一体何を考え、何を目的に、何を成し遂げたかったのか、それを読者に考えさせようとしているのではないかと感じた。おそらく、大学生くらいの年齢を過ぎた大人ならこの「なにかやらないと」というような焦燥感を持ったことがあるはずでそういう人なら、この作品の雰囲気を理解できるのだと思う。音楽の専門的な話も出てくるので作者は、きっと音楽経験者でバンドに憧れたことがあるんだろうなと思いました。
不思議でやさしい物語
主人公が、大学を中退するところから物語が始まる。塾で先生をしていて、教え子の名前を借りてネットの掲示板に書き込みをして、バンド仲間を募集する。端的に言ってしまえば、それだけの物語。でも、中村航作品でお馴染みの独特な空気感は相変わらずで、読み進めること自体に喜びを感じることができる。結局主人公の彼は何がしたかったのかなぁ、こうなることを望んでいたのかなぁ、などと読み終わったあとにいろいろ考えてしまう。一緒に収録されている「月に吠える」がまた面白い。ドラマーっていうのは属性、というのはとても興味深い言葉だな、と思う。中村航さんご自身が経験がおありなんだろうなぁ。