世の中にゼッタイなんてないの。ゼッタイなんてこの世にはないの。
大野の彼女
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全部で5章からなる恋愛小説ですがその中の2章目が「LOVE or LIKE」に収録されていた短編でした。なので、彼と彼女の、その前後の話に興味津々でした。2章では、恋に浮かれすぎた恋人たちが会う曜日や電話する時間と曜日を決めて恋愛するという、なんとも理性的な恋愛をするのでどうなるんだろう、なんでこんなことしてるんだろうと不思議に思ってたからです。彼と彼女が出会うまで、彼女の中高校時代の話もあってそれは軽く流して読める感じでした。彼と付き合っているときの事を友達に相談したりする話があってそちらのほうが、裏バナシ的な感じで面白かったです。
この本は、これまで読んだ何百何千もの本の中で、一番好きな恋愛小説かもしれない、と思うほど大好き。大学で、彼と彼女が付き合うようになって、お互い恋愛にどっぷり浸かってしまって、他のことがおろそかになって、あえて距離を置くことにする、という流れがまず大好き。そういうふうに自分の生活スタイルやリズムが乱されてしまうことに不安を感じる彼女に共感が持てるし、好感が持てる。章ごとに彼の視点も彼女の視点も描かれているのがまた面白くて。中村航さんの作品はどれもそうだけど、独特の空気感があるんだよなぁ、と思う。それがとても心地が良くて、何気ない文章がどれもこれも心に染みる。あとはやっぱり木戸さん!
この物語は、あまりに甘酸っぱくて、想いっきり青春で、一生懸命で、率直なお話です。リア充すぎない、オタクでもない、ちょうどいい加減の大学一年生が、自分の生き方を確立していて落ち着きのある同級生の女の子と恋をします。忙しい大学生活や友人先輩との関係とともに、ゆっくりなようでいて素早く、恋愛が進んでいきます。女の子は、男の子と付き合うのは初めて。甘酸っぱい問題がいろいろと浮上してきます。相手のことを考えすぎて、他のことが疎かになる。そういうのって、やっぱり初めてだとどうしても戸惑う。それを、見事に(?)ほとんど悩むことなく解決した男の子と、自分なりの答えを見事に確立させている女の子。あまりに、人間が出来過ぎている気もします。今の日本にこんな二人がいたら、ちょっと浮きそうです。でも同時に、こんな大学生がいて欲しい、と思わされました。やさしい気持ちになりたいときに読むといいと思います。この感想を読む
大野の彼女
彼女がキスをした後に感情が不安になり、子供の頃におばあちゃんに言われた言葉を思い出すシーン