僕の好きな人が、よく眠れますようにのあらすじ・作品解説
僕の好きな人が、よく眠れますようには、中村航の小説。 主人公の山田は東京の理系の大学院で研究を続けている。春、主人公の所属するゼミに北海道からゲスト研究員として一人の女性、斉藤恵がやってきた。直後の懇親会で、彼女には誰とも恋愛できない理由があることが明かされる。山田はその理由を知りつつ恵に恋をしてしまい、気持ちを抑えても心は少しずつ彼女に近づいていく。一方、恵の心にも山田への恋が芽生えていた。同じ研究室で日々を過ごすうちに、山田は恵とその距離をさらに縮めるのだが、恵の抱える事情によって二人は近づけないでいる。ところが、あることをきっかけに二人は相思相愛だったことを知り、ついに一歩踏み出した関係へと進んでいく。お互いに運命の人だと感じる幸福感がある一方で、許されない愛だという不安が二人を包むのだった。 許されない恋をテーマにしつつ、軽妙な会話や周囲のユニークな登場人物などを交えて、爽やかに二人の関係を描く。
僕の好きな人が、よく眠れますようにの評価
僕の好きな人が、よく眠れますようにの感想
好き、という気持ちがよくわかる本。
大学院生の山田くんはゲスト研究員として北海道から来た女の子に恋をしてしまいます。懇親会で意気投合する2人。だけれど、そこで女の子、メグは人妻だということが分かるのです。不倫とか絶対ダメ、と理性的に考える人には受け付けにくい物語なのかもしれませんが人を好きになるって、こういう感じでしょうがないよね、と思ってる私には、とても楽しく読めました。2人の話の掛け合いが面白いし山田くんと妹のメールのやり取りも、いい兄妹という感じで。木戸センパイに至っては、凡人には理解しがたい面白さが。登場人物は少ないけど、それぞれが際立っていました。最後に決着がつく、という話ではないですが不倫という題材のわりには、軽く読める恋愛小説だと思います。
不倫小説
タイトルに騙された感。てっきり素敵な恋愛小説なのかな、と。中村航さんだし。何の前知識も持たずに購入してとても後悔した。これはただの不倫の物語じゃないか、と思った。好きな人は好きなんだろうけど、自分は配偶者のいる人に魅かれないし、配偶者がいると分かった時点で自然と気持ちをセーブする人間なので、主人公にちっとも感情移入できなかった。正々堂々と勝負、とかならまだしも。すまき状態になってる場合じゃないよ! という感じ。そして最後のあれ、妹さんの描写は、「ライ麦畑でつかまえて」へのオマージュだと思うんだけど、それもなんだかただのパクりみたいで、がっかりしてしまった。
純粋でもそれは不倫には変わりない
この物語は人妻に恋して関係を持ってしまう理系大学院生のお話です。不倫にあたる話なので、内容だけ聞くとものドロドロした修羅場的な物語を想像してしまいますが、中村さんの手にかかれば、穏やかで素敵な物語に仕上がります。胸が張り裂けそうな恋ではなく、ただそっと彼女のことを愛する。その恋がどれだけ純粋であっても、それは最後まで不倫でしかない。現実を『逃げずに』描写することこそが、中村さんという作家の世界観なんだなって思いました。今回の物語も結末に明確なオチはありません。でもそれが中村さんという著者さんの作品なんだなって思います。定期的に読み続けていきたい著者さんのひとりです。