鏡のなかの鏡—迷宮の評価
鏡のなかの鏡—迷宮の感想
狂気の世界
ファンタジーの名手として日本でも名高いミヒャエル・エンデだが、こんな恐ろしい連作短編集も書いているというのが実に興味深い。個人的には、心あたたまる児童文学まで書いているのに本当の顔はこちらなのではないか? と思っている。ひとつの物語は、何がしかのかたちで次の話につながっている。それが最後まで繰り返されていて、最後の話は最初につながっている、という構成。これが実にうまい。そしてこわい。終わりのない、永遠に繰り返される、それこそ鏡のなかの鏡のような構造。自分が一番印象に残ったのは、花嫁と花婿の話。現実的に考えればありえない設定なのだが、そこに恐怖がひそんでいる。人の心の闇の部分のようなものを突き付けられる。