一度、きちんと読んでみたかった作品
原点に触れるジキルとハイドというフレーズは、二面性を表す記号のように浸透しているけれど、原作はどうだったろうか、という動機で本書を手に取った。直接のきっかけは、スティーブン・キングの『死の舞踏』というホラーを論じた著書で触れていたからである。長きにわたって語り継がれる作品には、共通の匂いがある、というような話であり、自分で直接確かめたくなったのだ。発表された時代と現代を比較しながら読むのも楽しいこの作品は、一八八六年出版、つまり百三十年も前の作品である。日本では鹿鳴館時代ということになる。そのため、人物描写や設定には時折わかりづらい箇所もある。主人公の弁護士は、愛想が悪いわりには人に好かれる性格だったりするし、ジキル博士の侵した殺人事件を窓から覗いていた目撃者の女性は、すぐに誰かを呼んだりせずにやっぱり失神してしまう。私は専門家というわけではないので、それがスティーブンソン独自のテイス...この感想を読む
3.53.5
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