金閣寺の評価
金閣寺の感想
三島由紀夫の作家としての思想や美意識を表現した、戦後日本文学の金字塔「金閣寺」
三島由紀夫の戦後の日本の純文学を代表する名作「金閣寺」は、金閣寺放火事件の犯人、林承賢という少年僧をモデルにした小説ですが、事件や人物は、小説の基礎的な材料を提供しているだけにすぎず、三島の作家としての思想や美意識を表現した、彼の代表作で、美文家の三島の華麗で、美しく堅固に構築された日本語の文体を味わう小説でもあると思います。このどこをとっても、華麗で美しい日本語の表現で満たされている小説の中でも、特に好きな一節-----。「午後も雪であった。私はゴム長靴に、肩から鞄をかけたまま、参観路から鏡湖池のほとりへ出た。雪は暢達な速度で降った。子供のころよくそうしたものだが、私は今も天へ向かって大きく口をあけた。すると雪片はごく薄い錫の箔をうちあてるような音を立てて、私の歯にさわり、さて、温かい口腔の中へ、隈なく雪が散って来て、私の赤い肉のおもてに融け浸み入るのが感じられた。そのとき私は畢竟頂上の鳳...この感想を読む
三島由紀夫の世界を感じる
昭和25年に起った実際の金閣寺放火事件を題材にした小説です。官能的であり流麗な言葉で、ものすごい狂気が描かれています。主人公の「私」は金閣寺が無力の根源だと言っていたが、自分が畏敬するものを「壊したい」という矛盾した感情を持つことは、おそらくすごく人間的なことかもしれません。そうすることによって完全なる美としてきた金閣寺と不完全さに苦しむ己を同化させようとしたのではないかと。青年の金閣寺への恋愛ストーリーと言えるかもしれません。三島由紀夫の世界にどっぷり浸かりました。時間をおいてまた再読します。この小説を書いた時、作者は31歳だそうで驚きです。