自分の生きてきた意味や死んで行く意味について、ちゃんと考えることができますよね。あとにのこされる人の方も、そうじゃないですか?
山本美代子
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死が間近に迫っている人、または死が間近に迫っている人の近くにいる人の短編集です。「その日」というのは自分が死ぬ日ということですね。友人に会いにいったり、一人で抱え込んだり、心配になったり・・・一つ一つの話が心に染みわたります。最後には短編集で出てきた登場人物たちのその後が分かります。その章がやはり一番好きでしたね。どこまでも残酷だけど、自分がいつこうなるか分からない。そういう時、自分ならどうするだろうと考えながら読みました。重松清はいつも読みやすくリアルな話を書きますが、その中でも「その日のまえに」は「エイジ」と並ぶくらいに大好きです。何回も読んだ本です。大人になって読むとまた違ってくると思います。
涙もろい人はあっという間に涙腺崩壊するはずなので、覚悟しておいた方がよいです。テーマが「死」なんて、ちょっとずるいなーと思いつつ、あっという間に引きずり込まれてしまいます。どっぷりつかって一度読むと疲れてしまいます。でも、「死」は誰にでも必ず訪れるものだということにも気付かされます。その時と場所、原因は違っても必ず訪れる死。その日のまえになにができるか、その日を迎えてしまったら、残された人はどのように生きていくのか、物語がたんたんと描かれていくなか、読み進める自分の中で答えのようなものが見えてくる気がします。それこそがこの本の魅力だと思いました。
山本美代子
主人公の妻ががんで亡くなった後、小学生の同級生に、看護師になった理由を聞かれた後の答え。