ハサミ男のあらすじ・作品解説
1999年に殊能将之が書いたデビュー小説で、第13回メフィスト賞を受賞し講談社ノベルスより刊行された。同年の宝島社の「このミステリーがすごい」で第9位にランクインした長編小説である。 この作品は、女子高校生ばかり狙い絞殺後に被害者である少女の喉にハサミを突き立てるシリアル・キラー、通称「ハサミ男」が、3人目に狙った女子高校生を次のターゲットとし、時間をかけ用意周到に殺人の準備をしていく。殺人を決行しようとした夜、ターゲットの少女が自分より先に同じような方法で殺されているのを発見したことから、その模倣犯を自ら突き止めていく話である。 語り手である自殺願望者の「わたし」、自殺未遂後に面接する医師、事件解決に奔走する警察の目線でそれぞれ書かれており、作者が読者を騙すために使われる叙述トリックの手法を用い、前代未明のクライマックスとなっている。 前述したトリックのため映像化は不可能と言われていたが、2005年に麻生久美子と豊川悦司主演で映画化された。
ハサミ男の評価
ハサミ男の感想
犯人がわからない
殺した少女に対しさらにハサミをぶっ指すというのはグロすぎます。残虐性で非人道的。どんな具合に気が狂っているんでしょうか。なにが彼をそうさせたのだろうって本と考えましたよ。連続殺人犯である切り裂きジャックを彷彿とさせる内容。怖くて仕方ありません。連続殺人犯とか今の世の中にもざらにいますしね。でもそのハサミ男もぎゃふんってなるんですよ。自分のやり方を真似されちゃったらね。彼はまさか?なんで?えっって混乱したはずです。自分でもそうなりますもん。世の中に同じ殺し方のできる奴がいるなんてそう思えませんからね・・読む進めていくとトリックについてあぁーあれかーって思うところもあったのですが、騙されました。こういうトリックものには結構強くなってきて推理力も増してきたと思っていたのに。。。まだまだだなって思った今日この頃でした。あなたは犯人を当てることができますか?きっと苦労すると思いますよ。騙される可...この感想を読む
とても面白い!!
メフィスト賞受賞作品です。登場人物・ネタ・内容、どれをとっても面白いです。作品内容は「主人公は「ハサミ男」と呼ばれるシリアルキラー。そんな主人公が次の被害者に選んだ女の子が別人によって殺されてしまった。殺人犯なのに、殺人犯を探さなければならない」というお話です。海外バンドXTCの曲をネタにしてみたり、出てくる食べ物が本当に美味しそうだったり(被害者の家の近所にある喫茶店の食事は本当に美味しそうだった)最後の最後にどんでん返しが待っていたり、でとても楽しい作品です。作者は去年に亡くなってしまい、もう新しい作品は出ないのですがとても残念です。
頭がこんがらがる快感。
今年2月に急逝した殊能将之のデビュー作。以前からその変わったペンネーム、正体が謎、妙なタイトルの作品が多い(「美濃牛」を聞いたときは何故か笑ってしまった)、など変な作者だなーと思っていましたが。最近になってやっと、はじめて読みました。猟奇連続殺人事件を巡る、犯人と犯人と犯人と刑事の丁々発止のやりとりがなんだかおかしい作品です。語り手は誰なのか、「わたし」は「何」なのか?落ち着いて読まないと頭が混乱します。人物造型(医者の存在など)は、今日から見れば目新しいものではありませんが、オチに至るまで、作者の鋭い筆致が十分に愉しませてくれます。猟奇殺人の凄惨な状況描写、暴力描写などもありながら、徹底的にドライに読ませてくれる「ヤンデレ探偵」という、かなり変わったお話です。