水車館の殺人の評価
水車館の殺人についての評価と各項目の評価分布を表示しています。実際に小説を読んだレビュアーによる評価が2件掲載中です。
各項目の評価分布
水車館の殺人の感想
風景画のような舞台
綾辻行人の『館シリーズ』2作目。前作から引き続き中村青司の建てた館が舞台となり、登場人物・島田潔を探偵役として話は進む。『館シリーズ』の骨子がこの作品で固まった、といっても過言ではないだろう。トリックとしてはわりとシンプルな部類ではあるが、現在と過去が入り乱れる文章は、読み手の目くらましとなって物語を見えにくくし話を難しくしてくれる。相変わらずの嬉しいクローズドサークルという舞台に、『招かれざる客』として探偵役が紛れ込むのも、王道を楽しみたい人間にはご褒美のようなものだ。この作品の館の主は画家ということで、随所に絵画の話が出てくるが、その画面を説明する文章と館の佇まいもあって、なにか風景画のような印象を抱く作品だ。その風景画は惨劇など相応しくないように思うが、それでもこのストーリーが似合ってしまうのは不思議だ。