ゴールデンスランバーの感想一覧
伊坂 幸太郎による小説「ゴールデンスランバー」についての感想が9件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
伊坂ミステリ
一人の男が首相暗殺の濡れ衣を着せられていろいろな人に助けられながら逃亡劇を繰り広げていくお話です。物語の構成として現在と過去が交互に話され、その中で共通の人を通しつつ物語が展開していきます。第二部でもう一人の男が現れ真犯人かと思わせるようになっているがそこで話は二十年後にうつりそして事件の真相へと迫ると言う形になっている。しかしその構成があだとなり逃亡の疾走感がややかけているかと思われる。しかしやはり終盤は伊坂の才能を感じさせるところでたくさんのところにちりばめられた伏線が一つの大きな線となり色々な登場人物を巻き込みラストを迎えるところは見ものです!パズルのように作りだされる伊坂ミステリの中でもその特徴が顕著に現れた一冊だと思います。
伊坂ワールド全開
実際自分にこんなことがあったら怖いな~、と思いながら読みました。 総理大臣を殺した犯人にしたてあげられてしまった主人公が繰り広げる逃亡劇は圧巻です。物語の展開もお見事でした。 世の中何があるかわからないですし、日本は平和だと思っていますが、もしかしたらこんなことが起こるかも?と想像してしまいました。現実的ではないですが、小説なので楽しく読めました。 総理大臣暗殺の犯人として国中から追われることになるというお話ですが、表現のタッチや物語の展開が決して重苦しくなく、なんとなく楽しく描かれていて、うーんなんとも伊坂さんらしい作品だなあと思いました。
人と真摯な関係を築くことが自分を助ける。
突然、何の予告もなしに首相暗殺の容疑者にされてしまう主人公の青柳雅春。国家VS1個人。どう考えても助かりようがないのに逃げ果せてしまうのはやはり青柳が「いい人」だからの一言につきると思う。青柳は、友人や元カノ、元職場の同僚や、昔助けたことのあるアイドルなど今まで真摯に向き合ってきた人たちの力をかりてピンチを切り抜けていきます。途中、通り魔や入院患者など偶然に出会った人たちにも助けられるけれど何かしら彼が、いい人オーラを出していたのかも。テンポがよく、この先どうなるんだろうと一気に読めてしまいます。なぜ狙われることになったのか、整形をしてまで逃げて幸せなのかなど気になるところは残りますが、楽しめました。
信頼してくれる人の大切さ
首相暗殺の濡れ衣を着せられて逃亡する主人公とそのお友だちのお話です。こんな風に国家の陰謀に一般人が巻き込まれることがあるんかいな、怖っ!と思いました。見どころは、自分を信頼してくれる人の大切さ、でしょうか。主人公が好人物のため、たくさんの人が逃亡の手助けをしてくれます。主人公が二枚目っていうのも魅力のひとつかもしれません。大学時代の友人・元カノ、元職場の同僚、昔助けた元アイドルなど。そして、連続通り魔殺人犯まで!?彼らの手助けがちょっとづつ重なって、逃亡の成功につながっていきます。主人公にとって「都合良すぎ!」な展開が多くありますが、大目にみることにしましょう。私の中で1番盛り上がったのは、主人公の父親と報道陣の対決シーン。「ちゃちゃっと逃げろ」と言い放つところは、父親が息子をどれだけ信頼しているかが伝わって、おもわず涙してしまいました。残念ながら、国家の陰謀を暴いたり、何故主人公が陥...この感想を読む
大きな力との孤独ではない戦い
主人公・青柳雅春は首相暗殺の嫌疑をかけられ、逃亡を強いられることに、というのがこの小説の簡単な(簡単過ぎる)あらすじだが、ここが伊坂幸太郎作品だなぁと思わずうなってしまうのが、逃亡しながら、青柳雅春が自分のこれまで築いてきた信頼できる人間関係を駆使していくところだ。つまり、青柳雅春が本当に“いいひと”で、周りの人たちはそれが分かっているから、それぞれが青柳雅春を助けるために動くことになる。そういう人と人とのつながりを強く感じさせてくれるところが、ハードながらもあたたかい話だなぁ、と思う。ネタバレ。これ、普通に読んでいて気付いた方どれくらいいらっしゃるんだろう?第三部、事件から二十年後、これ書いたのは、青柳雅春本人だ! 読み直していてそれに気付いたときは本当に興奮した(笑)。ヒントはある。二十年経って、自分なりに事件のことを調べたんだなぁ、ちゃんと人としての生活を送っているんだなぁ、とい...この感想を読む
全然解決しない感じが印象的
先日、ボストンマラソンでの事故があった時、この小説を思い出しました。一応犯人らしき人を捕まえる事で事件は解決してしまうけど、その裏側は全然わからないままということが、世の中には沢山あるのかもしれません。ケネディの暗殺事件を連想させながら描かれるこの物語も、不特定多数の悪い奴らの暗躍が市民を巻き込んでしまう感じになっています。実際に現実の日本で、ここまで銃を乱射したりする事件は起こりにくいと思うのですが、運悪く犯人に仕立て上げられたり、事件に巻き込まれたりということは、あるかもしれない…。そう思うと怖くなります。この話で一番残念なのは、沢山の登場人物が死んでしまうこと。真相が闇に葬られてしまう恐怖は感じられるのですが、もう少しどうにかできなかったのか?と感じました。
私はちょっと苦手かも
恥ずかしながら、堺雅人さんが好きで映画から入って、なんとなくすっきりしなくて、原作を読んだのですが、伊坂さんの作品は私はちょっと苦手みたいです。借金に縛られ、巨悪の手先にされた友人にはめられて、暗殺犯に仕立て上げられた主人公。友人や逃亡中に知り合った人に助けられながら、追手から逃げ続け、結局は逃げ切る話なのですが、真犯人が捕まるわけではないところが、なんとなくすっきりしなくて。主人公の覚えのない証拠映像が出てくるのは、巨悪が主人公そっくりに整形した人物を用意したからで、主人公が逃げ切るために選んだ方法も、結局その整形手術にかかわった人物の勧めで別人になること・・・仲のいい人たちには、姿形は変わっても自分だとわかるメッセージをこっそり伝えるのですが・・・それって、結局元のようには暮らせないわけで・・・どんな形であれ、冤罪に巻き込まれたら、元の生活に完全に戻ることは難しいのだろうけど、全く...この感想を読む
友人
逃げて逃げて逃げて...最後は...!!!?疾走感が半端なく一気に読み上げてしまう作品です!「逃げる」といえば、私は社会から逃げたことがあります。つまり、ニートになった期間が少しあります。この作品のように、誰かに言い寄られることもなく、誰かに追いかれられることもなく、誰かに捕まりそうになるわけではなく...でも、この作品と共通しているところがあります。「友人」に助けられたことです。なぜか、この作品の そこ に感動してしまったボクはおかしいのでしょうか。読み取り方は人それぞれの作品ですが、私は好きな作品です。大好きです。
読む手が止まらない
著者伊坂幸太郎の逃亡もの。主人公が濡れ衣をきせられて逃亡する物語は結構ありがちなものだけど。時間を超えて、登場人物がどこかでクロスしてる。著者らしいと感じるのは「事件の20年後」という章を事の発端が起こる前に入れておくところ。また、関係者が死にまくっても悲壮感がないのが著者らしい。その「20年後」を先に書いておくことで、読者に予備知識が入り、次の章の「事件」で深くストーリーにのめり込めるようにしている。また、イメージ化しやすいシーンも多くあるためとても読みやすい。伏線もきちんと回収してくれて、ちゃんとオチをつけてくれるミステリー。それって、意外に大事だと思います。