草枕の感想一覧
夏目漱石による小説「草枕」についての感想が4件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
やはり言葉が綺麗でした
40代に入って読んでみると、その深みのある素晴らしさに夢中になれる。「三四郎」をはじめとする三部作が好きですが、「草枕」は趣が全く違って、難解でした。ですが、名作は一通り読んでおきたいです。綺麗な日本語を読むって良いですね!!文章が生きてる感じです。「神様のカルテ」を読んで、「草枕」を読みたくなりました。絵画のような作品は、読んでよかった。もうなんか最高としか言いようがないです。とにかく圧倒的に美しい。読み始めてしばらくすると「これが”坊っちゃん””吾輩は猫である”を書いた作家か」と驚かされました。まるでシュニッツラーやムージルの書く小説のようです。
ある種、芸術論かと。
「兎角に人の世は住みにくい」この言葉は今の現代にも当てはまると思った。特に、主人公のような大都会東京にいれば余計に思うはずだなと思う。そして、ごく自然に温泉宿へと癒しを求める青年。そこで出会った那美という女性に振り回され戸惑う青年。実は、この青年は漱石自身だったそうなんです。この温泉宿も実際に存在しており、今も現役営業されているようです。もちろんこの那美さんという女性も実在しており、実際の名前は「前田卓子」さんという方だったらしいです。この前田卓子さんもとい那美さんは物凄い変わり者で何回も青年を翻弄し続ける所が見どころだと思います。
芸術作品
草枕は、いろいろな意味で芸術作品です。まず、美しい文章、この草枕を読んでいると、小説が芸術なのだということを再認識できます。声に出して読んでみればそのリズムの良さ、日本語の美しさがわかるはずです。そして、言葉の通り、芸術作品がたくさん文中に出てきます。私は伊藤若冲や長澤芦雪、酒井抱一などが好きなので、作品内に彼らの作品を登場させた夏目漱石の審美眼というか、芸術的なセンスもかなりのものだったと思います。日本の江戸絵画だけでなく、海外芸術にも精通していた漱石、多方面への博識ぶりがただただすごいなと思います。高校生くらいのときには芸術にも興味がなく、非人情ってなんのこっちゃで、やたら難解に思えたものですが、今となっては漱石の異彩ぶりがわかる名著だと思います。
日本文学史に残る美しい小説
ストーリーがどうこう言うよりも、とにかく何となく美しい感じが伝わればよかったと、作者本人が言った作品です。漱石が言うとおり、正しく美しい文章と、美しい文章で描かれる日本の原風景を楽しむ、日本文学史に永遠に残るであろう名作です。漢詩に由来する言葉も多く使われているので、一見とても難しそうですし、実際少し難しいのですが、文章自体にリズムがあるので、慣れるとすらすら読めるところがこの小説の素晴らしいところです。夏目漱石は難しいと敬遠されることも多いけれど、やはり日本文学史に残る偉大な作家です。日本人は一生に一度でいいから、「草枕」を読んでおいた方がいいと思います。私は何度も繰り返して読んでしまっていますが(笑)