オスバチの触覚は、女王バチの匂いを探し求めるために長くなっているんだ。ぼくには役に立たないものだと思っていたけどーマリア、君に触れることができてよかった。
ヴァーヴァルト
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風の中のマリアは、2009年3月に講談社から出版されたベストセラー作家百田直樹による書き下ろし小説である。 オオスズメバチの帝国に生まれた戦士マリアは、幼い妹たちと‘偉大なる母’のため、恋もせず子も産まず、ある日突然おとずれる最後の日まで命を燃やして戦い続ける。主人公である働き蜂マリアの目線で描かれた物語は、オオスズメバチの世界と30日という短い生涯を懸命に生きる蜂たちを描いた感動作である。 作者の百田直樹は、放送作家として数々の番組構成を手がけた後、2006年に「永遠の0」で小説家デビューした。デビュー作は累計発行部数450万部を突破する国民的ベストセラー作品となり、2013年には岡本准一主演で映画化され大ヒットし、第38回日本アカデミー賞で「最優秀作品賞」など全8冠に輝いた。その後も「ボックス!」「モンスター」「海賊とよばれた男」など数々のベストセラー作品を世に送り出し、2013年には本屋大賞を受賞した。
嫌われ者スズメバチ、のはずが…。「ハチは好きか」と聞かれて、「はい好きです!」と答える人間が世の中にいったいどれくらいいるだろう。ましてやスズメバチ。さらに言うならオオスズメバチ。大きいと言っても身の丈は10cm未満、人体に比べればはるかに小さい。なのに、目にした途端「殺される」と本能的に思わされるあの貫禄。刺されれば痛いのは当たり前、何度も刺すことができる上にあっという間に仲間を大群で呼び寄せ、「毒のカクテル」と称されるその身に持つ毒を空気中にまで散布する。虐殺部隊と呼んでも過言ではないと思う。虫好きな私でさえも、生体には安全地帯からしかお目にかかりたくない存在だ。庭に巣ができたと言われたら、彼女たちほど「土下座でもなんでもしますのでお引き取りください」と願いたくなる存在はない。本作はそんな「稀代の嫌われ者」オオスズメバチを主人公にした作品である。物語は、主人公・マリアの狩りのシーンから...この感想を読む
はじめてオール5にしてしまいました。ほんとうによくできています。まず、登場人物が全員ハチで、いっさい人間が出てこないことが素晴らしい。ハチに感情移入してしまう話なんて、あるでしょうか。人物描写よりずっと難しいであろうハチの心理描写を、とてもうまくかいていて、百田さんの筆力を見せつけられた気分です。そして、マリアがとにかく格好いい。自分の使命を信じて、なりふり構わず生きる、闘う。その姿は、文句なしで素晴らしいです。百田さんって、使命感にあふれる主人公の話がとてもうまいですよね。そういう生き方をうまく描けるということは、百田さん自身がとても素晴らしい人なのでしょう。
題名からでは気づかない人が多いかもしれないけど。この物語はスズメバチを元にしたものです。最近流行りの擬人化はしてなく、読むうちに気づいたらもう飲み込まれていました。スズメバチの生体もうまく物語の中に組み込まれていたので昆虫図鑑をみるよりも遥かに勉強になったし。虫は嫌い。スズメバチとかもっての外だしって思っていたのが見方がガラッと変わりました。もちろん今もズズメバチの事は怖いんですけど。この本を読んだ後はスズメバチってカッコイイところもあるんだなって思いました。虫嫌いの方が読んでもこの本は意外と苦痛にはならないと思います。自分の中で作ってしまっているイメージにこだわらず読んで欲しい本です。
ヴァーヴァルト
オオスズメバチの女戦士マリアが、ヴァーヴァルトの触覚に触れた時の台詞。マリアは最初で最後の恋の喜びを知る。