舟を編むの感想一覧
三浦 しをんによる小説「舟を編む」についての感想が5件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
三浦しをんの本屋大賞受賞作品
三浦しをんの名を一気に押し上げた、本屋大賞受賞作『舟を編む』は、一躍作家・三浦しをんの名を世に広めた作品であろう。もっと詳しく語るなら、それまではちょっとした文学好きやライト層に名を知られていた三浦しをんの存在を、「本を普段読まない層」にまで認知させた作品なのである。この作品は本屋大賞を受賞するに至り、舞台化された名作『風が強く吹いている』や直木賞受賞作の『まほろ駅前多田便利軒』と並び、三浦しをんの代表作とされている。そもそも本屋大賞は、どういった立ち位置にあるのか。そもそも文芸書というものには、さまざまな賞が存在しているのは誰もが知っているだろう。芥川、直木賞はもとより、山本周五郎賞や山田風太郎賞など、角川ホラー大賞にアガサ・クリスティー賞など、挙げればキリがないほどだ。そのなかで、2004年という近年に設立された本屋大賞は、「書店員が選んだ面白い本」がもととなっている。つまり選考委...この感想を読む
辞書を読んでみたくなりました。
辞書というものを使ったことは、もちろんありますがこれを作るのに、たくさんの人が関わってこんなに大変な作業を経て出来上がるというのはまったく考えたことがありませんでした。10年以上も1つの想いを胸に突き進むというのは一体どんな感じなんだろう。みんな何か変だけど惹きつけられる登場人物達のたくさんの情熱と知識と時間と地道さ、真面目さなどを集結させて辞書を作り上げていく過程が、テンポ良く、面白く読めました。すごく引き込まれました。この本を読んでから言葉というものを大事にしたくなりました。そして辞書を読み物として読んでみたくなりました。
辞書を作っている人がいる、なんて初めて気付きました
辞書を作っている人がいる。 そんなこと、今まで一度も考えていませんでした。辞書を作るのに莫大な時間と労力が必要なことも、まったく知りませんでした。 「舟を編む」というタイトルがまず秀逸ですが、内容も素晴らしかったです。 主人公のマジメさん。キャラ立ってます。純粋すぎて、面白みがなさすぎて、逆に面白い。 15年という長い歳月を描いていますが、終盤で辞書が出来上がったときの達成感は、読んでいたわたしも感じてしまったくらいです。『やったー!』って。 今まで触れたことのない辞書というテーマで、最初は『へー。出版社にそんな部署あるんだなー』くらいの感じで読んでいましたが、途中からぐんぐん惹き込まれました。 さすが、三浦しおんさんです。
日本語を想う
「舟を編む」というそのタイトル。初めてこの作品を知った時、そのタイトルを冠する小説の題材が辞書の編集部だということにいたく感動したものです。「舟」を「編む」という言い回し。限りなくさえ思える数をもつ言葉の世界を、進み行くための大切なツールである辞書。それが舟として捉えられた上、それを作り上げることを編むと表せること。日本語って、なんていいんだろう…と。そんなシンプルな幸せを、読む前から噛み締めることになったのでした。辞書づくりが転職極まりない男が主人公です。その彼がマジメという苗字なのもまたたまりません。仕事を愛すること、大事な人を思い遣ること、自分の国の言葉を誇りに思うこと。好きという思いから派生していく様々な喜び。こんな小説、読みたかったんです。ありがとう。
たくさんの手で作り上げられたものの素晴らしさ
この物語は15年という歳月を費やして辞書編集に携わった人々の愛と友情と人生の豊かな話。特殊な職人さんたちの雰囲気と使命感の表現、そしてコミカルだが愛情を持って人間を描く描写、三浦の腕前の良さを堪能した。ついに本が完成するが、辞書編纂に協力してくれた先生はガンにおかされ辞書を手にすることはできなかった。先生の死、出版パーティでの関係者とのやり取り、では涙が出て来た。情熱をもって色々な人たちの手で1つのことをやりとげる姿はカッコイイですね。自分自身、今目の前にある事に一生懸命取り組もう!と正直に思えました。その他にも繊細な心の動きや、言葉自体の魅力にも触れられる作品です。