13階段のあらすじ・作品解説
13階段は、2001年に講談社から出版された長編ミステリー小説である。「ジェノサイド」や「幽霊人命救助隊」などの作品でも高い評価を受けている高野和明のデビュー作品である。高野和明は、この作品により、選考委員の満場一致で江戸川乱歩賞を受賞した。 殺人を犯し服役した後、出所した青年・三上に、ベテラン刑務官である南郷が、ある仕事を持ちかける。それは、事故により事件前後の記憶を失った死刑囚・樹原の冤罪を証明できれば、多額の報酬をもらえる、というものだった。自分の起こした事件のせいで、家族の生活が困窮していた三上は、その仕事を引き受け、樹原の冤罪を証明するために南郷とともに事件の調査を始める、というのが、あらすじである。更生の意味や死刑制度や冤罪などが話のテーマとして盛り込まれている。 この作品は40万部を売り上げ、2003年には長澤雅彦が監督を務め映画化もされている。出演は、反町隆史、山崎努などである。
13階段の評価
13階段の感想
死刑制度をテーマにしたエンターティメント
冤罪によって死刑にされる瀬戸際にある男を救うために、過去に罪を犯して仮釈放中の青年と刑務官が真相の究明にあたります。冤罪と死刑というテーマ設定で分かるように、中心となるものが死刑制度の是非にあります。罪と人権と社会が複雑に混じり合って果たして正当なものかどうかが、物語に重みを与えています。この作品で特筆すべきは、リーダビリティであり、ストーリー構成の巧さです。テーマの料理のしようによっては重苦しいある意味退屈な小説になりかねませんが、本作は重いテーマを驚く程のエンターティメント性の中で作り上げています。面白みとテーマの切実さもあって、読み終わるまで中断させない魅力があります。重たそうなテーマと敬遠せずに、純粋に小説として読まれても全く損はない小説です。
江戸川乱歩賞受賞の名にふさわしい難しいテーマを上手く描いた作品
江戸川乱歩賞受賞ベストセラー小説で、映画化もされた作品です。免罪の可能性のある死刑囚を救うために、仮釈放中の青年と、刑務官が殺人事件の謎を解明しようとするストーリー。人が人を裁く死刑制度について考えさせられる作品です。刑務所の中も垣間見ることができます。ちなみに、13階段とは戦後の処刑台の階段の段数からきた言葉で「処刑場」のこと。直球なタイトルですね。難しいテーマを扱いながらも、万人に読んでもらえるような押しつけや独自性の無い書き方が大変素晴らしい。ほどよいスピード感で進んでいく物語と、そのリアリティーに思わず感情移入してしまう内容になっています。