変身の感想一覧
フランツ・カフカによる小説「変身」についての感想が4件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
実際にこんなことあったら嫌だなー。。
脳移植は、数少ないが日本でも実際に行われている事で、その脳移植が元でこのお話の主人公ジュンイチは、どんどん変わっていってしまう。というストーリーですが、読んでいて、ジュンイチが嗜好や趣味、考え方などがどんどん変わっていく姿に、読んでいて怖くなりました。 別の自分になっていく。脳は自分の感情などもコントロールしてる部分だから、いや・・実際にありえるかもしれない。と思ってしまいました。そしてそんな変わって行くジュンイチを最後まで献身的に支え、見守っている恵の姿は、もう可愛そうで仕方ありませんでした。そしてジュンイチも。 結末も、救われない形で終わってしまします。。最後までとにかく切なかったです。
孤高の天才
この中編小説は主人公が引き籠り段々と異形のものに姿を変えてゆく話である。家族は主人公を無視したらめ、彼は一層人を信じきれなくなった。というか、元来彼は孤独なのである。その孤独がたまたま強まって最初は少しの間だけ静養しようとしたのだろう。しかし社会の荒波に揉まれ自信を異星人と感じ始めた主人公は次第に怪物へと変貌してゆく。そして、そのまま彼は死んでしまったのである。この作品を気持ち悪いという人がいるが決してそんなことはない。非凡から天才に至るまでの人々は常に思惟を繰り返し、自分の世界に閉じこもっているのである。だが、一旦彼らが外気に触れると体が蒸発してしまう。誰も自分の努力、功績を認めてくれない。誰も自分を愛してくれない。それらを包含したのが「変身」なのである。
奇妙
朝起きたら芋虫になっていたという、グロテスクな超展開から始まります。そこに対する意味付けや理由付けを行わず物語が進むというのは、当時のシュールやナンセンス小説の流れをくんでいるのでしょうが、それを含めてとてもモヤモヤさせられつつ、逆にそれが話しの奇妙さを引き立たせて物語に引き込んでいきます。そして、醜い芋虫に変身したグレゴール・ザムザを取り巻く環境や、心理的描写に社会的に圧迫されていく人間の心理がえげつないほどに痛感ささせられます。元祖引きこもり作品とも言えると思いますが、現代のひきこもりの心理と通じるものもあり、社会の病理というものを考えさせられる作品です。
なぜそうなってしまったのか
朝、目が覚めると、なぜか大きな虫になっていた主人公のグレーゴル・ザムザ。カフカの小説は、「なぜそうなってしまったのか」という原因がごっそりと抜け落ちているものが多く、ただそうなってしまった事実だけが歴然と存在し、その後もそれが当たり前のように進んでいくのが不気味です。そして両親の借金の返済もあるし、妹と両親が働き始めると、家族3人が生き生きし始めるのも、グレーゴルの人間だった頃の働きを否定しているような気がしてなりません。妹のグレーテはそれでも、虫になった兄に食事を運んだり、動きにくかろうと家具をどけたりいろいろ世話はしますが、最後は結局見捨ててしまいます。流石に虫にはならないでしょうが、現実世界でこういうの、ありえそうな気はします。今までずっと働いて家族を支えて来てたけど、何かが原因で働けなくなった人とか・・・そう考えると、切ないと言うか怖いなと思いました。この感想を読む