新参者の感想一覧
東野 圭吾による小説「新参者」についての感想が5件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
被害者
某有名レンタル店でDVDランキング上位にこの映画があったので、それを先に見ました。そこで見て、初めて東野さんの作品だと知って、ガリレオを思い出しましたが、ここに出てくる主人公の刑事さんは全く性格が違うんですが、個性的で愛すべきキャラで、好きです。内容は、日本橋署に新参者としてきた加賀刑事の物語です。そして、事件を解決するために加賀刑事が動いているときに言ったことばが好きです。「事件によって心が傷つけられた人がいるのなら、その人だって被害者だ。そういう被害者を救う手だてを探しだすのも、刑事の役目です」 こんな言葉、他の刑事ものや作品で聞いたことがないです。東野さんの人間性も出ているような気がして、大好きです。ハッピーエンドなのも良いです!
観察眼
刑事モノだけど荒々しくない、読んだ後に爽やかな気持ちがする物語。主人公の鋭い観察眼と深い洞察力に感嘆しました。ドラマも見ましたが、やはり本で読むと細かい描写もあるので面白さもひとしおです。何の変哲もない普通の街で起こる殺人事件。意外に絡み合う人間模様。それを見つめる一人の刑事。派手な銃撃戦やハラハラの犯人との駆け引きもないけれど巧みなシナリオで惹きつけられます。ごく普通の人物が、あっけなく事件の犯人や被害者になってしまう怖さも感じましたが・・・全般的におどろおどろしさはなく、もっともっとシリーズで読みたいと思わせてくれる作品です。
人間ドラマ
下町日本橋に赴任してきた刑事が、現場を歩き回りながら事件を解決していく。現場主義の一人の刑事が主人公。ある一つの事件をオムニバス形式で描き一見関係のなさそうな事件が短編で綴られていくが、それぞれが最後に一つに結びつく。短編であるからミステリー要素はそう複雑ではないが、絡んだ人間と事件の謎がどれも面白い。第9章の最後にうまく結びついていく点もなかなかうまい。ミステリー要素に加え、人間模様もまた魅力である。ドラマ化されたようだが(見てません)、確かにドラマ向きの小説かもしれない。ドロドロした事件や凶悪な事件に関わるような刑事の話ではないが、こんな刑事がこんなペースで事件を解決していくのも面白い。ちょっと違った視点から事件を見てみるのも良い。
刑事と関わる周りの人々の人間模様
ある警察が犯人逮捕のためにある商店街を歩きまわり犯人の手掛かりを見つけていきます。その中でさまざまな形の家族の愛や友情の物語に触れることが出来ます。犯人を見つけるためにどんな些細なことでも調べて可能性を消さないといられない刑事はさまざまな人々と出会い私たちに感動の結末を教えてくれます。家族を守るためについたウソ・・・疎遠になっていた家族との再会・・・大好きな人への嫉妬・・・大切な人への贈り物・・・犯人がわかるまでに刑事が出う人々の短編作品の数々に引き込まれてしまいました。そしてその一つ一つがつながった時犯人がついに登場するのです。
ドラマの後に読んでも面白い
阿部寛が演じたドラマを先に見たので、基本的な筋書きを知ってしまっていては面白くないかな?とも思ったのですが、とりあえず読んでみました。私の中では、既に加賀刑事はアベちゃんになっていて、登場人物もドラマの人物を思い描く形で読んでしまいますが、それがかえって話のディテールを味わう手助けになったかもしれません。人物像や事件の概要以外の部分をじっくり読む事ができました。日本橋界隈は江戸時代からの街でありながら、私はあまりじっくり見て歩いた経験がありません。じっくり何度も歩いていないと感じる事のできない、江戸情緒にあふれる人々の暮らしぶりが丁寧に描写されていて、ドラマで取りこぼした部分をじっくり堪能した気がします。