月は必ず欠ける。松坂熊吾という月、ツキ、運もまた、永遠ではない。
満月の道というタイトルが藤原道長を彷彿とさせる平安時代、娘を天皇の后にして絶大な権力を誇った藤原道長の和歌に、「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の かけたることもなしと思へば」という句がある。この世は、満月が欠けている部分がないように、自分のためにあるようなものという、当時の自分の権力の絶対性を示すような句だ。しかし、月というのは常に満月なのではない。三日月だったり半月だったり、欠ける時もある。「満月の道」の書籍の帯にも、松坂熊吾はついに復活すると記されており、熊吾が年老いてまた商売熱を復活させ、ついに成功して安泰を手に入れるようにも感じられる印象があるが、実際内容を読むと、やはり月は必ず欠ける、という事が付きまとうのだという事を痛感する。人はいつかは死ぬので、どこかで自分の運命がどんどん先細って行くのを感じる時が来るのかもしれない。この巻の後半あたりからは、そういう逃れられない人間の漠...この感想を読む
5.05.0
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