エロスという題材への集中っぷりが光る 小川洋子初期の代表作
彼女は今作でエロスに挑んだ!現在は非常に静かな、密やかな世界を描くことが多い小川洋子だが、今作では正面からエロティックな世界に挑んでいる。発表したのは1996年、デビューから8年目、彼女が34歳の時だ。デビュー直後に芥川賞を取っており、この頃はまだ若手女流作家という位置づけが強かったのではないかと思われる。その彼女をして、老人と少女がSMを繰り広げるという展開、ショッキングでもあり、20年を経た今でも、小川洋子の好きな作品の上位に挙げる人が多い。 彼女は本作以前にも性描写を書く事はあったが、これほど明確に表現している例は少ない。本作では陰毛、乳房、乳首などの言葉を繰り返し使っているし、翻訳家がマリの秘部に指を差し込む描写や、その体液を彼女に塗りつけるなど、露骨な表現が目白押しだ。男性器そのものや挿入を示す描写こそしていないものの、翻訳家の攻めに対してマリは明らかに性的快感を覚えているし...この感想を読む
4.04.0
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