娼年の評価
娼年の感想
娼年という禁断の魅力
最初は気だるい夜のバーから始まる。20歳という大人のか子供なのかわからない年齢に差し掛かり全てに退屈してしまったリョウは御堂静香という母親と同じ年頃の女性と出会う。リョウは女性に対してこの時はまだ潔癖症だ。女を体では知っているが、楽しめない自分にも幻滅しているのがよく分かる。筆者の文体は女性でもおどろく程丹念に書かれているため、服装、行動、言葉の使い方からそのキャラクターの性質がよくわかる。「これ以上澄んだミネラルウォーターさえ乾けば汚れを残していく」リョウのこの視点から潔癖症で、繊細な一面が見えて取れる。御堂静香はリョウの本能と隠れた才能を見抜き、リョウを誘い出す「あなたのセックスの値段を知りたくない?」しかし、長く繰り広げられた予想を裏切り、ベッドで御堂静香は少女を差し出す。「あなたが相手をするのはこの子よ」リョウは戸惑いながら少女を抱くが、ここでも筆者の文才が際立つ過去の経験のフラ...この感想を読む
透明感あふれる。
タイトルやあらすじから予想するようなどろどろとして欲望を貪る…といったことはまったく無く、とても透明感のあるさらさらとした文でした。と言っても石田氏の書く小説で秀逸な、人間模様の優しさとリアル感は健在である。幼くして母を失った主人公がその姿を「お客」である女性達にその姿を重ね、母性への飢えを満たそうとする姿は健気さすらも感じさせられました。もちろん描写的エロスな部分もありますがそれは必要な場面で不自然にも感じられませんでした。現代の社会問題、そして人間のそこにゆらりと顰めく欲望の姿がこの小説には見られました。春を買う女達は快感を買ったのか…私はそうは思わなかったです、そこには娼年の優しい嘘がありそれに対価を払う。理想の高みである幸せを束の間でも感じるために。
ドキドキします
題名の通り主人公は娼婦ならぬ娼年なのです。お金をもらい、お客と体を重ねます。ベッドシーンの描写がなかなかすごくて、読みながらドキドキしたのを覚えています。一途な同級生が、主人公のやっていることを責めます。その同級生とのベッドシーンも読みごたえがありました。でも、同級生の気持ちもわからなくもなかったり。好きになった人が、娼年だったら、ウザいと思われてもそんな態度を取ってしまうかもしれません。切ないと思いました。著者の作品は、いつも、人と人との関わりの深さや、キャラクター、あたたかみ、生きていく道を探していく過程の描き方が丁寧で好きです。