どこにつれていかれたのかよくわからない物語
提灯お岩が遊佐家にやってきた朝倉かすみのテンポの良い文章が好き。一文節が短くて、リズムでいうならタタン、タタンという感じだろうか。話の内容は多少ブラックであるにも関わらず、そのタタン、タタンに連れられて私は遠いところにぽつんと置いて行かれる。そしてどこから来たのか、結局何が知りたかったのか、いや物語の何を理解すべきだったのかが分からなくなっている。『遊佐家の四週間』はまさにそういった小説なのである。幼なじみの羽衣子とみえ子。もうその名前から、勝ち負けは決まっている。羽衣をまとった天使のような風貌の羽衣子。43歳になっても羽衣子は美しい。みえ子は見栄っ張りのみえ子か。しかし、みえ子は己をよく分かっていて、見栄っ張りではない。初対面の正平に「提灯お岩」と自分のことを称するのである。まあ、みえ子に対する描写はひどいものがある。その「提灯お岩」から始まって、壊れた目玉焼きを貼り付けたような垂れ目...この感想を読む
3.53.5
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