太田蘭三「脱獄山脈」で伝えたかった真実
作品の概要太田蘭三氏の山岳推理小説「脱獄山脈」はTBSのドラマにもなった人気のある初期の作品で、作者のエネルギーが随所に迸(ほとばし)っている大作です。 何度読み返しても設定や筋書きが面白く、主人公の一刀猛の人間性豊かな人柄や他の3人の脱獄犯の少し変わった性格の描写が楽しい作品です。 府中刑務所に収監されていた元警察官の受刑者が3人の囚人と共に脱獄をして奥多摩から奥秩父さらに北アルプスを縦断して日本海の不親知海岸(おやしらず)まで縦走し冤罪を晴らそうとした物語です。 このレビューでは小説内の名場面の感想を中心に、作者太田蘭三氏が山岳小説独特の状況描写ついても感想を記してゆきます。脱獄の動機「脱獄山脈」の小説全体に流れるテーマは主人公・一刀猛や妹や元同僚の冤罪を晴らしたいという執念です。中でも妹の夕子と警察学校の同期で親友の相馬は一刀の無実を信じていました。 両親を早くに失くした一刀と夕子は、...この感想を読む
5.05.0
PICKUP