人生最大の分岐点を迎えたつもりだったが、 チェロを手放したとたん、不思議と楽になった。今まで縛られていたものから、すーっと解放された気がした。自分が夢だと信じていたものは、たぶん、夢ではなかったのだ
小林大悟
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米アカデミー外国語映画賞を受賞するなど世界的に評価が高い映画ですが、私個人的には正直あまりにも重くて地味すぎて、お金を払ってみるほどの映画ではないと思ってしまいました。テレビなどで見るには「死」という誰もがいつかは体験しなくてはいけない不変のテーマについて考えるよいきっかけになると思います。納棺士という今まで存在自体も知らない人が多い職業にスポットを当てた視点は素晴らしいと思います。なかなか人の命の最後に携わるような題材はタブーのようなものになっていましたが、この映画によりスポットが当たっただけでも素晴らしいと思います。そしてとにかく映像がso beautiful!!日本の美を表していると思い、心がキレイになる気がします。
楽団の解散を機にチェリストとしての道を断たれてしまった主人公の大悟。最初は何とかしてチェリストとして復活するに違いないと思いながら見ていたのですが、全く違っていました。全く違う畑違いも甚だしい納棺士という仕事につくというのが意外でした。納棺士を始めたばかりのころは最初から納棺士らしい態度ではなく、やはり一般的な反応をとり、仕事を進めるに従ってだんだんとプロとしての態度、振る舞いが取れるようになっていくという成長過程がとても身近に感じられて良かったです。主人公の大悟を演じた本木雅弘さんの醸し出す雰囲気というか、態度というか、立ち居振る舞いがとてもきれいだなと思いました。バックに流れる音楽もとても素敵でした。この音楽がまた「おくりびと」世界をさらに美しいものへとしているような気がしました。
人の「最期」を生業とすることを自らの意思で選び取った人のそこに至るまでの心の葛藤。その決意を家族に言えない辛さ。身近な人々からの偏見、そして理解。難しいテーマを、ユーモアも交えながら、決して暗いイメージにはならないように作られているなと思いました。「『死』を見つめることで『生』が見えてくる」と言った人がいましたが、なんとなくそれの意味するところが見えてきたような気がします。それを尊ぶお仕事なんだろうなと、この映画を見ていて感じました。余談ですが、たまたま山形へ旅行に行った際に、「大悟と美香の家」に使われた建物が一般公開されていたので訪ねることができました。意外と小さなかわいい感じのお家で、いい思い出です。
小林大悟
大悟がチェロを売りに行った場面で言った言葉