おくりびとの感想一覧
映画「おくりびと」についての感想が7件掲載中です。実際に映画を観たレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
あまりにも重く地味すぎる気も・・・
米アカデミー外国語映画賞を受賞するなど世界的に評価が高い映画ですが、私個人的には正直あまりにも重くて地味すぎて、お金を払ってみるほどの映画ではないと思ってしまいました。テレビなどで見るには「死」という誰もがいつかは体験しなくてはいけない不変のテーマについて考えるよいきっかけになると思います。納棺士という今まで存在自体も知らない人が多い職業にスポットを当てた視点は素晴らしいと思います。なかなか人の命の最後に携わるような題材はタブーのようなものになっていましたが、この映画によりスポットが当たっただけでも素晴らしいと思います。そしてとにかく映像がso beautiful!!日本の美を表していると思い、心がキレイになる気がします。
とても奇麗な映画だと思いました。
楽団の解散を機にチェリストとしての道を断たれてしまった主人公の大悟。最初は何とかしてチェリストとして復活するに違いないと思いながら見ていたのですが、全く違っていました。全く違う畑違いも甚だしい納棺士という仕事につくというのが意外でした。納棺士を始めたばかりのころは最初から納棺士らしい態度ではなく、やはり一般的な反応をとり、仕事を進めるに従ってだんだんとプロとしての態度、振る舞いが取れるようになっていくという成長過程がとても身近に感じられて良かったです。主人公の大悟を演じた本木雅弘さんの醸し出す雰囲気というか、態度というか、立ち居振る舞いがとてもきれいだなと思いました。バックに流れる音楽もとても素敵でした。この音楽がまた「おくりびと」世界をさらに美しいものへとしているような気がしました。
重すぎず、ユーモアも交えながら「死」について考える。
人の「最期」を生業とすることを自らの意思で選び取った人のそこに至るまでの心の葛藤。その決意を家族に言えない辛さ。身近な人々からの偏見、そして理解。難しいテーマを、ユーモアも交えながら、決して暗いイメージにはならないように作られているなと思いました。「『死』を見つめることで『生』が見えてくる」と言った人がいましたが、なんとなくそれの意味するところが見えてきたような気がします。それを尊ぶお仕事なんだろうなと、この映画を見ていて感じました。余談ですが、たまたま山形へ旅行に行った際に、「大悟と美香の家」に使われた建物が一般公開されていたので訪ねることができました。意外と小さなかわいい感じのお家で、いい思い出です。
映画全体が白いベールで覆われた様
とても清らかで尊いものを見せてくれた映画。普段なかなか見ることがない世界だけど、誰もが最後に必ず通る道。このように送られたら、本人も家族もとても穏やかな気持ちになることができる。美香が「けがらわしい」と言うシーン。その気持ちは分かる。初めて知ったらショックだと思う。けれど映画全般を通して伝わってくるのは、死者を尊ぶ気持ち。きれいとさえ思ってしまったほどで、そこにけがらわしさは感じない。そして死と対極にある生が多く出てくることで、映画の中の均衡が保たれる。妊娠、会社の屋上の温室、白子を食べるシーン。自分が美香だったら、山下だったら、ツヤ子だったら、大悟だったらとずっと考えてしまった。
ちょっと強引?
物語として、全体的にうまくできていると思いました。納棺師になるまでの流れはちょっと説明的かなーと思ったところと、河原での石文のシーンは伏線としてちょっと強引かなと感じたところで少しテンションが下がってしまいました。本当は、ラストまでみると、あぁあの石文はここへの伏線だったのね、的なことになって感動を呼ぶのかもしれませんが、そもそも石文という設定がちょっと奇抜すぎて感情移入できませんでした。死と対極にある生の象徴として、食事のシーンがたくさん出てきたり、新しい生命の誕生などが効果的に描かれていて、良く考えられていると思いました。派手さはないので、大衆受けは難しいと思いましたが、ヒットしたようで意外でした。
死と向き合う。でもとても素敵なお仕事。
当時、日本アカデミー賞を受賞した作品という事で拝見しました。 まず、おくりびとという職種をこの映画を通して知り、葬儀関係のお仕事というのは、悲しいイメージがずっとありましたが、人生の最後を一番綺麗な姿に整えてあげ、そして旅立ちの準備をするとても素敵なお仕事だと言うことを知り、山崎努さん演じる佐々木生栄の、故人へ衣装を着させる作法の美しさや、劇中で故人の家族の方が『ありがとうございます。』と涙するシーンは本当に胸を打たれました。 本木雅弘さん演じる小林 大悟と実父との角質。そして、最後に分かる真実には涙が止まりません。 エンドロールでの本木雅弘さんのおくりびとの作法は本当美しいの一言。圧巻です。自分の大切な人をもっと大切にしたいと思い、人生の最後も深く考えさせられる。。とっても素敵な作品です。
目と耳で感じる人間の生死
冬の寒々とした無彩色の風景が、人の死をテーマとしたこの物語にとてもよく合っていると思いました。主人公が元オーケストラ団員という設定も面白いと思います。寂れた町の雰囲気は、老いて行くことと重なり、雄大な自然の風景が、小さな人間の人生と対比されるかのように映り、視覚的に訴えるものを感じました。また、山崎努さんが演じるNKエージェント社長がいるビルの上の階の部屋に、青々とした観葉植物が配され、生死のコントラストを見事に表現していると思いました。主役を演じた本木雅弘さんが、青木新門氏の著書から着想を得て、新たな形で映画化を実現した作品だそうですが、映像という視覚効果と音響効果をとても上手く取り入れられ、重厚感のある美しい作品に仕上がっていると思いました。