限りなく透明に近いブルーのあらすじ・作品解説
限りなく透明に近いブルーは村上龍による小説で、1976年群像新人文学賞、同年第75回芥川龍之介賞をそれぞれ受賞した。この作品は村上龍が19~20歳の頃に住んでいた福生市での体験が基になっており、福生市にある米軍横田基地周辺のハウス(米軍住宅)などで繰り広げられた麻薬、セックス、暴力、ロックの溢れる日常が描かれている。発表当時はそのスキャンダラスな描写部分だけが話題になった。 内容はそのような日常を醒めた目で見る主人公がそこから抜け出そうともがき苦しみ、遂には現実社会の巨大で圧倒的な力に押しつぶされそうになるが、その向こうに希望を見出そうとするまでの姿を描いた小説である。 中国語版が出版された際に村上龍はこの作品のテーマを『近代化の達成という大目標を成り遂げた後に残る「喪失感」である』と述べている。 1979年には村上龍自身が監督を務めた同名の映画が公開された。三田村邦彦が主演で、井上陽水、山下達郎、カルメン・マキなどが音楽で参加した。
限りなく透明に近いブルーの評価
限りなく透明に近いブルーの感想
セックスドラックロックンロール
村上龍の代表作。彼の作品はこういうドラッグとセックスの小説が多い気がする。ドラッグ、セックスに溺れる男女数人の物語。退廃的、自棄的な雰囲気で押し通している。ドラッグ、セックス、音楽が話の軸だ。特に何が起こるわけでもなく、ただ、そういう日常を切り取っただけという感じの作品。主人公はそういう生活をなんとなく客観的に見ている。彼自身、ドラッグに溺れ、乱交パーティーにも参加しているのに、自分のおかれている現実すら、どこか、遠くから冷静に見ているような感じ。文学的には、そういう冷静で淡白な文体で、セックスやドラッグを描いたのが評価されたらしい。
芥川賞受賞作品。
村上龍のデビュー作であり、芥川賞受賞作品。衝撃的な内容と聞いていたので読んでみたのですが、衝撃的ですねこれは。クスリ、LSD、セックス、暴力、兵士などの生活をそのままに描かれた作品です。これだけを見ると、酷く暗い内容に思えますが、読んでみると後に残るのは「綺麗」な印象。嫌な感じを殆ど残しません。多分それは一つ一つ簡潔に述べられた文体によるものではないかと思います。客観的なこの文体に作者・村上龍のセンスを感じます。ストーリーについては、このようにドラッグなどに溺れていく退廃的な人物を見ていると、晴れた世界の知らない人間の人生の空しさのようなものを感じさせられます。