小さな雪の、大きな旅
ポール・ギャリコの作品の中でも、わりと知名度が高いものではないだろうか。 この新潮文庫の表紙が、作品の雰囲気に凄く合っている。既に1冊持っているというのに、この表紙のためにまた買ってしまった。往年の名作の表紙を変える商法は本当にずるい。 内容は、山の中で生まれ落ちた雪の結晶が川の流れに沿って旅していく中での一生を描いたもの。キーワードとしては『人生』になるのだろうが、生まれ落ちた雪のひとひらの純粋さと無垢さに人間を仮託してしまうのは少し躊躇われる。ただ、ギャリコは、人間は生まれたとき、誰もがこの雪のひとひらと同じように真っ白だったとしたいのだろう。その心情は理解できる。 たまにこの作品を子供向けのおすすめ作品にリストアップしているのを見るが、これを読むべきなのは子供ではなく大人だ。社会の中核として働く大人に、この作品を読んでほんの少し涙して貰いたい。ギャリコの作品は、大体が大人のための童話だ。
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