小さな雪の、大きな旅 - 雪のひとひらの感想

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雪のひとひら

3.673.67
文章力
4.17
ストーリー
4.17
キャラクター
4.00
設定
4.17
演出
4.17
感想数
3
読んだ人
6

小さな雪の、大きな旅

4.54.5
文章力
5.0
ストーリー
5.0
キャラクター
4.5
設定
5.0
演出
5.0

ポール・ギャリコの作品の中でも、わりと知名度が高いものではないだろうか。 この新潮文庫の表紙が、作品の雰囲気に凄く合っている。既に1冊持っているというのに、この表紙のためにまた買ってしまった。往年の名作の表紙を変える商法は本当にずるい。 内容は、山の中で生まれ落ちた雪の結晶が川の流れに沿って旅していく中での一生を描いたもの。キーワードとしては『人生』になるのだろうが、生まれ落ちた雪のひとひらの純粋さと無垢さに人間を仮託してしまうのは少し躊躇われる。ただ、ギャリコは、人間は生まれたとき、誰もがこの雪のひとひらと同じように真っ白だったとしたいのだろう。その心情は理解できる。 たまにこの作品を子供向けのおすすめ作品にリストアップしているのを見るが、これを読むべきなのは子供ではなく大人だ。社会の中核として働く大人に、この作品を読んでほんの少し涙して貰いたい。ギャリコの作品は、大体が大人のための童話だ。

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儚くて、切ない物語

ひとひらの雪を女性と仮想し、生まれてから死ぬまでを描いた物語です。山に降り積もった雪が雫となり、川を下り、仲間と出会います。そして、伴侶を得て、子どもが生まれ、子どもたちはそれぞれ別の流れに乗り、独立していきます。さらに、伴侶も消え、彼女自身も消える時が来ます。しかし、それは雲となり、新たな生の始まりでもあったのです。そこには、ワクワクするような冒険はありません。情熱に満ちた激しい恋愛も、涙を誘うような悲劇もありません。ただ、淡々と、まるでライフサイクルの典型のような一生が描かれるだけです。それなのに、なぜか、心の深いところから、切ないような気持ちがわき上がってきます。たぶん、特別なことなどない、ごくごくありふれた人生こそ、真に幸せなものだと実感させられるからでしょう。他人の活躍や才能をうらやむのではなく、自分の人生を大切に生きることで、初めて人生に充足を得て、静かに死を迎え入れること...この感想を読む

4.54.5
  • 月読三葉月読三葉
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  • 424文字

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