儚くて、切ない物語
ひとひらの雪を女性と仮想し、生まれてから死ぬまでを描いた物語です。 山に降り積もった雪が雫となり、川を下り、仲間と出会います。そして、伴侶を得て、子どもが生まれ、子どもたちはそれぞれ別の流れに乗り、独立していきます。さらに、伴侶も消え、彼女自身も消える時が来ます。しかし、それは雲となり、新たな生の始まりでもあったのです。 そこには、ワクワクするような冒険はありません。情熱に満ちた激しい恋愛も、涙を誘うような悲劇もありません。ただ、淡々と、まるでライフサイクルの典型のような一生が描かれるだけです。 それなのに、なぜか、心の深いところから、切ないような気持ちがわき上がってきます。たぶん、特別なことなどない、ごくごくありふれた人生こそ、真に幸せなものだと実感させられるからでしょう。他人の活躍や才能をうらやむのではなく、自分の人生を大切に生きることで、初めて人生に充足を得て、静かに死を迎え入れることができるのではないか――そんなことを感じさせらます。
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