4つの物語 - 百瀬、こっちを向いて。の感想

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百瀬、こっちを向いて。

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文章力
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ストーリー
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キャラクター
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演出
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感想数
3
読んだ人
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4つの物語

5.05.0
文章力
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ストーリー
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キャラクター
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設定
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演出
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目次

『百瀬、こっちを向いて。』

映画化したものの予告を見たことで、この物語を知った。タイトルが印象的だった。高校生の恋愛の物語だということは知っていた。思っていたより、短めだった。神林先輩にも、百瀬にも惹かれた。惹かれたというよりも、惑わされてしまう。とっても素敵な2人だった。百瀬は、思い浮かべるだけでドキドキしてしまう。「野良猫のような挑戦的な目つき。」百瀬は本当にかわいい。一方、神林先輩は、物語の最後の方での秘密が、私を圧倒した。神林先輩も、百瀬も、私の頭の中に印象を残していった。宮崎先輩が百瀬に買った本「舞姫」。好きな人に本を買うのか。すてきだなあ。主人公が田辺に百瀬との演技のことを話す場面、『尊いことだよ』『僕の体験したことが?』『大切にするべきことだ』。一番好きな場面である。田辺もなかなか、やるじゃないか(笑)。主人公にとっては初恋なのかな?。人を好きになるとき、それは、人それぞれ違う、また、その瞬間を言葉にするのは難しい。恋愛が人それぞれだということを、つい忘れてしまうことがある。主人公が体験した気持ちを味わって、人それぞれだけど、なんかわかる、好きになる気持ちがわかるってなった。人を好きになることは、曖昧だけど、確実なもののように感じた。「演技をしてるうちに好きになる」っていうことに対して、好きになるってなんだろう、と、考えてしまった。個人的に考えたことだが、「この人が好きだ」と決めてしまえば、好きになるものなのか、それは違うような気がする。「好きではない」と決めてしまえば、好きではないのか、それも違うような気がする。もう、好きなのか、好きではないのか、考えていること自体が、動かぬ証拠のような気もするし。やはり、恋愛はわからない。いつ好きになるのかも推測がつかない。

『なみうちぎわ』

『愛とは状態のことで、恋とは状態が変化するときに放出される熱なのではないか。一階から二階へ階段をのぼると体があったかくなるのとおなじだ。心が熱を発しながら、今よりも上の、広くてふかい愛情の階段へ移行しているのだ。』。なるほどな、と思った。ストーリーが現実っぽくないが、心の動きはものすごくリアルに感じた。高校生になっていた小太郎。大人っぽくなっていて、どきっとした。大人っぽく見える瞬間は、みている方を揺さぶる。

『キャベツ畑に彼の声』

『心のなかでふくらんでいた言葉たちを。紙の上に出してならべることは、このまま心のなかでくさらせていくよりも、よっぽどいいことなのだ。』。個人的なことだが、むしょうに「かきたくなる」時のことを思い出した。言葉が溢れ出てくる時のことを思い出した。実は先生の妹が書いていたことなど、ところどころ驚くことがあって飽きずに読み進めることができた。キャベツの出荷に例えているところが、斬新で、ちょっと刺激を受けた。『なみうちぎわ』が少し登場していて、自分が読んだ小説が、物語の主人公が読んでいるみたいなことが好きだから、登場してきたときに心が弾んだ。

『小梅が通る』

主人公がメイクをしていたことは、とても驚いた。「なんで隠すんだよ!!」と心の中がウズウズしてきて、モヤモヤした気持ちになった。『あいつとのやりとりを、家で思い出してると、ここのところがぎゅっとしめつけられたみたいに?なるっていうか?』寛太の言葉である。まっすぐな言葉が、すごく響いた。人を好きになるときを表現するのに、これ以上の言葉はないと思う。最後にまだ、主人公が本当のことを言わないのが、少し「もやもや」する。しかし、最後のもやもやは、心地の良い「もやもや」だった。これは、個人的な妄想だが、最後の公園の場面で寛太が本当のことに気づいているパターンを想像すると、面白い。この本の最後に『小梅が通る』を読んだことも、すごく気持ちが良かった。

追伸

私が今まで読んできた物語と何かが違っていて、新しい気持ちを経験できた。自分のなかで、恋愛のイメージが固定的なものになっていると、どんな恋愛小説でも楽しめない。私のなかで、凝り固まっていた恋愛のイメージが少し、柔らかくなった。いろんな恋愛があるんだなあ。恋愛小説には、リアルさを求めていたが、リアルでないのも、いいなと思った。やっぱり、百瀬の印象が一番強い。私も、好きになってしまった。優しいと表現するのは、百瀬には似合わない。だけど、言ってしまうと、優しい(笑)。どこまでも、魅了されてしまう。中田永一さんの『くちびるに歌を』を映画で見たことがあるのだが、もう一度見たくなった。原作の小説も読みたくなった。『百瀬、こっちを向いて。』『なみうちぎわ』『キャベツ畑に彼の声』『小梅が通る』読んでいてどれも、まったく異なる感情を体験できた。キュンキュンする小説ではないが、濃い感情を味わえたと思う。中田永一さんは、別名で、本を出しているので、それも、読んでみたい。

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