強すぎるアリスにワクワク - バイオハザード II アポカリプスの感想

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強すぎるアリスにワクワク

4.54.5
映像
4.0
脚本
4.0
キャスト
4.5
音楽
3.5
演出
4.0

目次

前作からの続きとして

前作第1作目のバイオハザードでは、難を逃れたかに見えたとたんにマットもアリスもつかまってしまうというラストであった。アポカリプスはその続きから始まる。監督は変わっているが、脚本が前監督ということもあって、物語は違和感なく進んでいるように思う。そして、このアポカリプスで描かれるのは、人間の世界の終末の始まり。まさにアポカリプス(黙示録)を意味する、神が人間に示すものの始まりだ。人間こそが頂上にあり、生物兵器を操れると思っていて、実験を始めたけれども全然扱えない。そして気づいたときにはもう後戻りはできなくなっている。その時の流れを順を追って見せられるため、これは本当に起きるかもしれない…と思わせる恐怖がある。

っていうか、アンブレラ社もバカって言うか、社員を派遣して地下の入り口開けたらゾンビに喰われるっていう…そこでまたあの頑丈なドアを閉めることなんざ無理って話で。あとは感染拡大していくだけだ。でも性懲りもなく何度もチャレンジする、その精神は尊敬するよ。苦労するのはいつも下働きの者たち。何人犠牲にしようとも、自分以外に守りたいものがないんだよね、奴らには。

拡大を抑えるためにとる手段もまたひどいもので、ラクーンシティを封鎖しさらには市民をそこに閉じ込める。さらには、Tウイルスをうまく適応させて作ったらしき「ネメシス」という怪物を試運転。強いし操れる、これならゾンビたちにも負けずにいろいろ作業ができる…ってそんなうまくいかないのが生物兵器の怖さ。感染したゾンビたちをやっつけるには頭をぶち抜くしかないから、全部燃やし尽くせる核爆弾をぶっこもうっていう…もはや人を人と思わぬその所業である。

ゲームのイメージも入れてくれてありがとう

バイオハザードシリーズはまさにゲームの世界を踏襲しており、今作ではバイオハザード3を基礎として描いているらしい。こんなグロいホラー映画の中ではちょっと不思議な感覚だが、出てくるテロップ・場面説明がいかにもゲームっぽくて、バイオハザードを楽しんだファンからすれば楽しいと思う。冒頭の説明も、切羽詰まった状況も、息をのむのは映画もゲームも同じだ。

ネメシスに関しては…やっぱり映画でも悲しいと思うしかなかった。信頼した人が怪物へと変えられてしまい、そして戦わねばならない悲しみ。さらには、途中でお互いの存在の記憶を呼び戻してしまったことがなおさら残酷で、そのあとネメシス(マット)はアリスの味方をするんだけど、ヘリコプターが墜落してきてアリスたちをかばって死んじゃうっていう…どこまでいっても、恨むことしか生まれないこの殺戮。アリスは毎回記憶を飛ばされて実験台にされるが、それでもやっぱり思い出す。この悲しみ、そして自分がなぜか生き残ってしまっている苦しみを。思い出すシーンがすげーせつないの。

アリスだけでなく、アンブレラ社の研究員のひとりである博士の娘もまた抗体を持つということで…不穏でしかない。失敗したらポイ。それこそネズミやカエルを使った実験みたいに。ゲームの世界を実写化するとこれほどまでに痛ましいのか…と切なくなるね。ゲームでもよりリアリティが高められているから、この時はまだそうでもなかったかもしれないけど、R指定でも仕方ないほどの精度だろう。

科学者嫌いになりそう

とにかく、アンブレラ社に対する恨みばかりがつのり、結果を追い求めて命を顧みない科学者を嫌いになりそう。白衣を見ると怖くて血圧上がるとか、おじいちゃんおばあちゃんにはそういう症候群があるが、まさにそれがこの映画だと発症しそうになる。血みどろの闘いのあとにあるのは、真っ白な空間の無菌室。そして自分一人。どんな戦いも誰かに操られていると感じる恐怖。いろんな空想の物語がある中で、あがいて走り回っている主人公の土臭い世界が、実はホログラムで管理された世界だったとか、どんな情動も科学的に作り出されたものだったとか、そういう映画はたくさんある。科学に対して、それだけみんな憧れてもいるし、恐れてもいるんだと思う。このままでいたい気持ちと、変化しなければならない気持ちの間で、本能的にね。

無駄かもしれない。それでも、打ち勝つためにはあがかなくてはならない。そんなアリスはとにかくカッコいい。そしてそれを助けに来てくれるカルロスやジル。カッコ良すぎる。「アリス計画」として転がされていようと、絶対に生き延びてみせる。その強い意志は観客を勇気づけてくれるほどだった。

ミラ・ジョヴォヴィッチの代表作であるこの作品は、もはや別の女優さんでは絶対に嫌だなと思うほど、はまり役だと思う。あのスタイルの良さと身のこなし、何より目力…!もはやラブロマンスなんて似合わない、ホラー・シリアス映画にこそいてほしい、そんなキャラクターだ。

Tウイルスが徐々に広がる恐怖

アポカリプスでの恐怖を助長しているのは、何よりそのウイルスの広がり方が忠実で、着実なことだ。隔離された空間の解放から、徐々に広がるウイルス。さっきまでそこで走っていた人が、突然誰かの首元にかみつく恐怖。そしてそれが多くの人を媒介して確実に広がっていくリアリティー。水が、空気が、人が、すべてがこの世界に及ぼしているものの大きさを感じずにはいられないし、ウイルスが生きていることを考えずにはいられない。その歩みを2時間以上かけて丁寧に表現しているのだ。胸に迫るものがあるよ。

バイオハザード3ではすでに広がり切ってどうしようもなさそうなところから始まり、45では徐々にアンブレラ社の核心に迫っていくことになる。2のアポカリプスはその序章に過ぎない。6のザ・ファイナルを知っている人は、そのことを考えるとこのあがきが無駄だったのか、価値あるものだったのかが…とても微妙な気持ちになる。

Tウイルスは人の多いところ・流通の多いところほど広がり、大地に平和なところはなくなっていく。こんな状態から抜け出す方法なんてないかもしれない。それでも、アリスたち生存者は闘い続ける。答えを探し続ける。生存のために力の限り努力し続ける姿は、バイオハザード2の時点ではまだ浅い。345と重ねていくごとに、どんどん増すようにできている。その構成がうまいなーと言わざるを得ない。

みんな生きててくれただけでも嬉しい

この段階で、ヘリコプターが墜落してもみんなが生きていてくれたこと。それが何よりうれしい事だった。生かされていただけ・これからも転がされ続けるとはわかっていても、やっぱりオリジナルのアリスには絶対敵わない…ってことにしてもらえるといいな。

他作品でもそうだが、ぐっちゃぐちゃの空間からいきなり真っ白の空間になるシーンって…精神的にすごく…苦しくなる。生きることへの努力を無に返されるような気持ちというか。一番怖いことは、孤独であること。孤独と戦い続けるアリスのように強くなれたらいいけれど…感染者ゆえの行動なのかな。

それにしても、ゾンビが生存者に食らいついて食べるのに、全部は食べない…よね?どこかしら傷はつくが、ゾンビとして新たな覚醒をして生き始める。ゾンビになればある程度再生もできるんだろうが、バイオハザードのゾンビっていったい何をしたいんだろうね…。いや、何をしたいとかないんだろうけどさ…。

研究施設で生かされていたアリスが、記憶を取り戻すまでがかなり早かったのも印象的。どんどん強くなっていってるよね。ここまでのド派手なアクションも十分すぎるくらいの魅力があったが、この後に続く世界中をめぐる彼女の旅の序章として、アポカリプスは印象深い作品である。

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3.03.0
  • すらりすらり
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