武器を持つ者の優しさが伝わらない悲しみ - シザーハンズの感想

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武器を持つ者の優しさが伝わらない悲しみ

4.54.5
映像
5.0
脚本
3.5
キャスト
4.0
音楽
5.0
演出
3.5

目次

ジョニーデップ名作の1

ほんと、ジョニーデップの変幻自在感がすごい。「パイレーツオブカリビアン」や「チャーリーとチョコレート工場」のキャラともまた全然違う、人造人間でありながら人と同じ感情を持って行動できるエドワードを本当に巧く演じているなーと思う。人間の心があっても人造人間。機械的な立ち居振る舞い、人から疎まれて悲しむ心を持っているようで、てのひら返しを理解しきれない機械っぽい戸惑いの表情も見てとれ、演技が最高!

物語は、人造人間として造られたエドワードが主人公。エドワードがあと少しで完成するってときに生みの親の博士が死んでしまい、エドワードは手がハサミの状態になってしまった…。なんでハサミなんかくっつけてんの?という謎は置いといて。とりあえず、博士から世の中ってもんを教えてもらう前に一人になってしまったのだ。古城で一人静かに暮らしているのである。あの古城、いい雰囲気だよね。ディズニーっぽいというか、美女と野獣みたいなお城で、CG使わず作り込まれたお城の庭とかエドワード自体のコスチュームもインパクトが大きくて好きだった。ファンタジーの世界は絵本のようで、エドワードのキャラも含めて素敵なおとぎ話の始まりである。

そんなエドワードのもとに、化粧品販売をしているペグが訪ねてきて、物語が始まっている。ペグのキャラもいいよね。アメリカンなギャグの雰囲気がよく出ている。ペグっていうかベティって感じの。ペグが拾ってくれなかったら、こんなことにはなってないんだけど、キムに出会えたことを感謝しないといけないね。

コメディータッチの中にある悲しみ

両手にハサミを持っているから危険…なんでこんなやつ連れてきたの?って思われた。でもやっぱり、ペグやその家族の優しさのおかげで、エドワードはハサミを生かす道を教えてもらう。美容院とか、樹木の剪定とか、芸術的にカットできるその能力で、エドワードは一躍有名になっていった。そして、ペグの娘であるキムとお互い惹かれあって…キムのボーイフレンドだったジムに嫉妬されてしまう。ジムが最悪な野郎で、エドワードを騙して金庫を開けさせようとする…

笑いが常にテンポよく進んでいく中で、やっとエドワードに人としての喜びが感じられ始めたのに、ぶち壊そうとする人間がどこかにはいて、確実に不幸をもたらそうとする。それに勝てるほどの強さをエドワードは知らないし、世間のてのひら返しに耐えられるほど、あの優しい家族が強いわけでもない。それがすごく悲しくて、人と違うものがあるということが、いかに問題になってしまうのか、よくわからないものに対して嫌悪感を抱く人間の悪いところで、知れば絶対に打ち解けられるはずなのに、拒絶したり、詳しく知りもしないくせにあらぬ噂を立てたり、ちょっとしたこじれを大きく言いふらしてますます孤立させたりする。その残酷さはリアルだし、心にぐっとくるものがある。

ただ、あの名シーン。キムが「hold me」とエドワードに言い、エドワードは「I can’t」と言うところ。よーーーく考えてみて、抱くのはできそう…じゃない?人造人間なら、ハサミ外すかカバーで覆うとかできそうじゃない?上肢全部がハサミじゃないんだから。ハサミが開かないように押さえることってできそうなのにね…っていう謎もある。(笑)

大衆意識の怖さ

誰かが「エドワードってすごいのよ!」と言えば、どうやらすごい人がいるらしいという話になり、よく知らないが、素晴らしい人造人間らしいと噂が立つ。ところが何か1つ間違いや失敗が起きたときに、「そんなことをやるなんて、やっぱりあいつは人間じゃないんだ」と誰かが言い、「そうよね、やっぱりね、私も実は怖いと思ってたのよ」と賛同者が現れ、たちまち評価は地に落ちる。

評価される者が、常に評価され・信用され続けるということは、本当に奇跡のように貴重なことで、対立することもあればご理解いただけないことだってたくさんあるものなのだ。しかも、エドワードは人間じゃない。いつでも人間すべてを敵にするリスクを持っている存在だ。エドワードという人造人間の心に寄り添い、一緒に生活してきた者にしかわからないものがたくさんある。それを他の人にも理解してほしいのに、他の人は理解しようとはしないのである。理解したいのではなくて、誰かをもてはやしたり糾弾したりする行為・粛清を与えたくなる気持ちのはけ口が欲しいのが人間なのである。

守られたキムやケヴィン、ビルやペグだって、エドワードがどんな人かってこと、ちゃんとわかってるよ。それを信じようとしてくれる人がいない時代だったからこそ、エドワードは1人になるしかなかった。魔女狩りみたいに、誰かを血祭りにあげて喜び救われると信じているような状態。革新的な何か、一見理解しがたい何かを認めようとしない、保守的な考え方って怖いよね。

キムの気持ち

はじめこそエドワードをキモいと思ってたキムだが、ジムの腐った性根にあきれ返り、エドワードを愛していく。金庫を開けようとしたときだって、キムを想ってジムのことを言わなかったエドワード。なんて…いい人なんだろう。人間じゃないからなせる技なんじゃないかって思うくらい、清い行動だった。そんな彼を大切にしたいと思ったキム。自分がちょっとくらいハサミでケガをしたからって大丈夫。なのにジムや周りはそれを許さなくて…

古城でエドワードが事務を殺してしまったとき、もう悲しみが最高潮。あぁついにやってしまったね…誰かを殺めたら、どんな理由であれもう人から認められることは難しい。それがキムにはわかっているからこそ、相打ちで両方死んだって嘘をついた。彼女なりの最後の優しさだった…

もちろん、両方死んだってことにして、古城には誰も寄り付かないだろうし、キムがエドワードの家に通い婚したってよかったとは思っている。エドワードを想えばこそ、人目を盗んで山に行くくらいできたんじゃないかって。それをしなかったキムのことは、少し残念に思う。共に生きていく道を選べなかったことは、誰のためだったの?って。結局大衆側に戻ったのがキムなんじゃないだろうか。

終わりの物悲しさは秀逸

冒頭の「雪が降る理由」は、エドワードが今でも氷の天使を作っているから、という素敵な理由だった。誰かを想って氷を削り、街には冬に雪が降るようになったんだって。いったいどれほどの量を削っているんだ…削って削って削って…たまりにたまったころ、季節がちょうど冬になって、雪として街へ降り積もる…なんてロマンチック。氷の結晶は、エドワードがキムを喜ばせたただ1つのものでもあり、キムを傷つけた唯一のものでもある。それでも雪こそがキムとの大切な思い出だから今日もまた氷を削っているのかもしれない…。終わり方は本当にせつなく、悲しく、また1人になってしまったエドワードのことを考えると、ホロリと涙が落ちてしまう。

映画として、ファンタジー世界も楽しめる「シザーハンズ」であったが、人の気持ちってものを深く考えさせてくれる作品でもあった。キムには最後までエドワードと一緒にいてもらいたかったけど、それも叶わなかったことが悲しすぎたし、人の善さも醜さも複雑で、物悲しい終わりであったと思う。それは確かに秀逸で、人の心に響く作品になったと思うし、この映画を見て、思いやりを学べる子どももたくさんいるのではないかと思う。

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他のレビュアーの感想・評価

切ないけど心温まる

発明のすごさ 発明の力ってすごいですよね。なんせ人造人間が作れちゃうんですから。でも仮初めだとしてもまさかのハサミっていうね。他にもあったでしょうになぜハサミだったのか不思議ですね。それに心臓はハートのクッキーだし。いろいろ突っ込もうと思えば突っ込めるんですけど、あえてスルーで。笑きっとお茶目心も取り入れたかったのかもしれませんしね。普通じゃありきたりになっちゃうから、ちょっと一工夫的な感じでそうしたのかもしれないですしね。でもエドワードちょっと可愛いなと思いましたね。愛情たっぷりで育てられたんだっていうのがよく分かるくらい純粋というかまるで少年みたいな心を持っているなって思いましたね。ただ完全に人間になれなかったんだっていうのがわかるのは肌の色ですね。両手はもちろんなんですけど、肌の色も悪いというか青白い感じになってましたからね。きっと血液とかまでは忠実に再現できなかったんですね。そ...この感想を読む

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独自のワールドの原点をここに感じます

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