めしやに行きたい。
- 「深夜」の「食堂」ならではの出来事
深夜の公園でも無く、昼間の食堂でも無い。深夜に営業する食堂「めしや」だからこそ集まる人々、起こる出来事が非常にリアルに描かれている。その1人1人、ひとつひとつの出来事に小林薫さん演じるマスターが向き合う。その姿は不器用で口数も少ない、どちらかというとぶっきらぼうだけど温もりが滲み出ていて温かい。まるで、マスターが出すめしやのメニューそのものだと感じる。初めて観たときは単調なストーリーだと思ったが、その中に味わい深い隠し味が沢山あると次第に強く感じた。
隣りの席の家族
常連も、顔馴染みも、初めての客も、関係なく皆が家族の様に過ごす。特に話はしなくとも、ぴったり肩が腕がくっついてしまいそうな狭い店内が家族の関係のよう。みんなその距離も求めてやってきているようにも感じる。
飾らないメニュー
深夜食堂といえば、毎回出てくる一品のキーポイントとなるメニュー。どれも庶民的で、言ってしまえば料理と言えないような品物の時もあるが、無性に食べたくなりすぐに同じものを食べた視聴者は数かぎりないと思う。完全に飯テロと化し、めしやみたいな食堂があったらな…と考えてしまう時もある。繁華街なんかには、きっと沢山の深夜食堂があるのだろう。
汚くて狭い店内
タバコのヤニで色が変わってしまった壁や棚、飴色に変わっている木のカウンター、動かなそうな扇風機、ホコリが被って色が変わってきている店内に這われた配線…。見回してみるととてもリアルで、本当に日本の何処かでめしやは間違いなく営業されているかのように感じてしまう。実店舗を借りて撮影しているのか、作られたセットなのか。疑問に思い調べたところ、埼玉県入間市にある広さ300坪の倉庫内に作られたらしい。こういったセットの細かいディテールの凄さも、観てるこちらが深夜食堂の世界へ入ってしまう大きな理由の1つだと思う。一度あのカウンターに座り「マスター。ビールと豚汁定食」と頼んでみたい。
「 うちの暖簾をくぐるんだったら肩書きなんて置いてきな 」
深夜食堂には短いセリフの中に、心に染みる名言が多い。マスターだけに限らず、険しい人生を送ってきた登場人物も多いからだと思う。よっしゃー!頑張るぞ!と気負ったものではないが、また明日から頑張ってみようかな。と思わせてくれる、ちょんと背中を押してくれる言葉が散りばめられている。繰り返し繰り返し観てしまうのもそのせいかもしれない。
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