いつも週末ではつまらない - いくつもの週末の感想

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いくつもの週末

4.174.17
文章力
4.50
ストーリー
3.75
キャラクター
4.00
設定
3.50
演出
4.25
感想数
3
読んだ人
5

いつも週末ではつまらない

4.04.0
文章力
4.5
ストーリー
3.0
キャラクター
4.0
設定
3.0
演出
4.0

目次

やっぱり江國香織のエッセイ

私は男性だ。何となく男性と女性では彼女の小説を読むその見方が違う気がするのでそう書いておく。なぜか私にとって江國香織のエッセイをたまに読むことは、やっぱりとても重要なことだと思った。彼女のエッセイは本当に安らかで無邪気だったりわがままだったり、形容しようと思えばいくらでもできるような、そのどれもあまり当てはまっていないような難しい感覚になるのだが、とにかく読んでいるだけで自分の普段忘れられていた領域に入り込むことができる。彼女の正直さというか、ありのままの姿を活字をとおして眺めていると、こんな風に物事を正直に考えるという感覚がいかに普段の生活の中で失われているかということに気が付く。そしてそう思ったところで日常に戻ればやっぱりその感覚は学校や仕事では役に立たないというか私には使いこなすことが出来ないのだが、そういう自分に定期的に気が付いておくことが重要なのだ。

「泣く大人」、「泣かない子供」、「とるにたらないものもの」と色々と彼女のエッセイは読んできたが(今もやっぱり読んでいるけれど)、この「いくつもの週末」は特に自然体の彼女が見られると思う。「とるにたらないものもの」なんかでは、江國香織の目線でいろいろな愛おしいものたちや、まさにとるにたらないものものについて描写されていくのだが、今作では江國香織のもっと主観的な感想や日常で感じていることなんかが垣間見える。おそらく身の回りで起こっていることや降りかかる現状に対して彼女の考えていることがわかるからだと思う。そして今作において特徴的なのは、ほとんどの話が、結婚や夫について彼女が何を思うかということがよくわかるということだと思う。当たり前だがその日常のなかでは彼女が悲しくなるような出来事もあるし、本当にイライラしているようなこともある。そういう無抵抗に彼女の身に降りかかることがとっても新鮮で彼女の反応というかその内で密かに考えていることがこっそり覗き見できるような気がして面白い。

夫や結婚について

もしかしたら今作を読む人の中には、夫や結婚についての彼女の根底にある意識というか考え方は変わっていると感じるかもしれない。私は特に彼女が他と違う感覚で結婚を眺めているとはあまり思わない(もちろん彼女は非凡であって小説家として突出した才能があるわけだからそう意味では普通ではないのだけれど)。なんというか彼女はすごく正直なのだ。普通の人が当たり前のように、つまり誰かが始めた当たり前のことを当たり前のようにはせずに、何か寂しいと思えば寂しいし、腹立たしいと思えば腹立たしく感じるのだと思う。その点については本当に共感できるし、そういえば私も同じ感覚だと思うことがある。そして一方で、男性として女性がこういう風に結婚を考えているということに新しく気が付き、少し驚いたり反省したりもする。それもまた楽しい。

一節に、「私は結局夫を愛しているのだと思う。そうでなかったら結局離婚している。」というものがある。こんな文章なんかも私は本当に新鮮に感じるのだ。素直に、「結婚ってそういうものじゃないの」と思うからだ。でも彼女の前ではこんな一言は逆に理解できないかもしれない。私自身も結婚というものに対してすごく付帯的だという印象があるし、愛しているなら結婚しているかどうかなんて本当はどうでもいいんじゃないかと思うけれど、それは何となく馬鹿みたいで幼稚な発想な気がしているから人前では決して言わない。でも彼女からすればやっぱりそういう表面的なことは表面的なことにすぎないし、それを馬鹿みたいに警鐘を鳴らす真似などしないのだ(こんなこと普通の大人ならしないのかもしれないけど)。こういう文章が、本当に安らかでありのままだ。

誰かの女(男)になるという事

彼女でも、「私は誰かの男になりたがっていたのかもしれない」という一節がある。それは本当に意外だし、意外というのは失礼なのかもしれないけど、不思議な気がした。私は結婚というのが誰にとっても平等に降りかかるという風潮や、それぞれが愛し合っているのにも関わらず、それだけに飽き足らず結婚という”状態”を作り出さなければいけないことに少しどう考えていいのかわからない時があったが、もし女性が誰かの女になりたいと考えることがあったとしたら、そして自分も誰かの男になることを望んだとしたら、それは確かに必要なことのようにも思える。

彼女の奔放さは、きっと単純な反骨心やあまのじゃくではないのだろう。独身時代に当たり前のように結婚して、どうしようもない夫婦喧嘩を繰り広げる友人を見て「信じられない」と思う感性がありながら、やはり誰かの女になりたいという願望も抱ける。やっぱりそういう自然で抗えないものには抗ったり抗えなかったりする、常に抗うのではなくて。そういうことが彼女にとっての結婚や夫なのだ。

やっぱり上手にはまとめられないのだけれど、彼女のエッセイを読むと自分の中で無意味に積みあがってしまったものたちが程よくかき混ぜられたりする。それがやっぱり心地いい。

あと余談だが、時どき思いついたように現れる本編と関係のなさそうな挿絵のページが可愛くていやされる。本当に余談だけれど。

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