妖しい官能と死の誘惑にみちた、耽美的な情念の芸術作品 - ベニスに死すの感想

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妖しい官能と死の誘惑にみちた、耽美的な情念の芸術作品

5.05.0
映像
5.0
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
5.0
演出
5.0

なんとぜいたくな耽美の世界であろう。それは、妖しい官能と死の誘惑にみちた、おそろしいまでの美しさだ。

1911年の夏、ベニスのリド島。保養にきた高名な初老の作曲家アッシェンバッハ(ダーク・ボガード)は、同じ海浜ホテルで、ポーランド人一家の美少年タジオ(ビョルン・アンドレセン)に出会い、心を奪われる。彼は少年の姿を求め、あとをつけ、待ち伏せし、恋焦がれながら、ついに言葉ひとつ交わさぬまま、折から蔓延していたコレラにおかされて、命を落とすのです。

無残な悲劇です。孤独で生真面目な主人公の魂をとらえた、少年タジオのこの世ならぬ美しさ。それは、"老い"の若さへの憧れ、芸術家の美への執着なのであろうか。いや、そうしたきれいごとの言葉さえむなしいほど、彼は狂おしく少年への恋慕にのめりこんでいくのです。

彼を正気に押しとどめた、老残の我が身への自己嫌悪さえ、今は狂恋の自虐的な快感へとすり替わるのです。黒々と髪を染め、白粉を塗り、紅をさし、その化粧を汗にくずして、黄昏の町にタジオを追いつづける痛ましさ。

恋する者の不安と恍惚、陶酔と苦痛。ダーク・ボガードの見事なまでの内面の演技は、鬼気迫るほどの素晴らしさだ。マーラーの音楽が官能のうねりを謳い、映像は崩壊のロマンティシズムにむせかえる。

沈みゆく病めるベニスで、優雅にまばゆい美少年が、微笑みのかげに運ぶ"死の影"の無気味さ。そして、主人公のうち震える恋の歓喜が、死の法悦へとたかまりゆくラストの、残酷な明るさはどうだろう。

この「ベニスに死す」という作品は、ヨーロッパの頽廃からしか生まれえぬ"情念の劇"であり、芸術家ルキノ・ヴィスコンティ監督ならではの優れた傑作だと思います。

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他のレビュアーの感想・評価

究極の美

「ベニスに死す」といえばビョルン・アンドレセンである。タッジオことビョルン・アンドレセンの美しさを堪能するだけでも十分な映画といっても過言ではないほどの魅力を放つ彼。溜息の出る程の美しさですよね。彼の虜になった人はかなりいらっしゃるかと思います。実は私も彼目当てで視聴しました。そしてこの映画はそんな美少年が、ショタコン変態オヤジにストーカーされる可哀想なお話。そう認識されてる方は多いのではないでしょうか。言葉が悪くなってしまいましたが、確かに一見するとそうでしかないです。ですが、私はこの映画を見る度なんだか叱咤されたような気分になるのです。脳天を撃ち抜かれたような衝撃すら覚えます。私もベニスに死せる1人かもしれません…。この得体の知れない焦燥感やら色々な感情やらが沸き起こる所以はなんなのか考えてみました。その1「永遠ではない儚い美しさ」この映画のテーマと最大の魅力は美です。ビョルン・アン...この感想を読む

3.03.0
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