この時代にピッタリのシニア青春映画 - ラストベガスの感想

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この時代にピッタリのシニア青春映画

4.04.0
映像
4.0
脚本
4.0
キャスト
5.0
音楽
3.5
演出
3.5

目次

現代にちょうどいいシニア向けサプリメント

最近地上波ドラマでもアラフォー俳優が注目されていますが、この映画は正にその先を行きました。齢70歳の恋愛と友情、つまりシニア世代です。現代のシニア世代のニュースといえば子供の介護離職やブラック施設での事件など比較的暗いものが多く、私の周囲のシニア世代もよく「お荷物になりたくない、迷惑をかけたくない」などと口にします。これもひとえに、シニア=人生の終わりに近いという感覚があるからこそ。しかしこの映画はシニア世代にとっての「今だって現役だ」という感覚を教えてくれました。超高齢化社会に突入している日本にとって、この映画は正にちょうど良いサプリメントといえます。

この映画は、マイケル・ダグラス、ロバート・デ・ニーロ、モーガン・フリーマン、ケヴィン・クラインといった豪華キャスト集結作品にもかかわらず日本ではさほど知られていないかと思います。それもそのはず、この映画の日本公開当時、2大若手イケメンが主役を務める邦画が公開されていました。このいかにも華のある邦画の脇で、派手なキービジュアルながらラストベガスは埋もれてしまったわけです。

私は劇場でこの映画を見ましたが、やはりというべきか観客の年齢層は高めでした。それこそシニア層の姿も多く、これぞリアルだなと感じたことを覚えています。映画というものは娯楽要素が強めですが、シニア世代がシニア世代のリアルを描いた映画を見るというそこに、やはり強いサプリメント効果を覚えたことはいうまでもありません。

モテ男の結婚が遠のく理由

世の中では歳の差婚というのがちらほら話題になりますが、この映画の主人公ビリーも正にそのタイプでした。独身貴族のモテ男は年老いてもピチピチの若い女性と結婚のチャンスがあって羨ましい!と思いましたが、ビリーは結局同年代の女性と恋愛することになりましたよね。

歳の差婚に関しては年齢差が上がるごとに離婚率が上昇し、20歳差になると同い年婚の95%離婚率がアップするという報告があります。しかしその一方で、夫が5歳以上年上の場合は離婚率が1/6減少するという研究結果も…もはやどちらが正しいかわかりませんが、最近私の周囲では10歳前後の歳の差婚がスタンダードになってきています。もちろん女性の方が年下です。これは若い女性と結婚することで健康な子供を授かりたいという希望もあってのことかと思いますが、同じように結婚にあせっている同年代の女性は強制的に対象外となるあたりが悲しいですね。

しかし世の中にはいつまでも結婚に焦らないように見える男性がいます。ビリーもその一人ですよね。
なぜ彼らのようなモテ男は結婚しないのか?
昔からこれは疑問でしたが、この映画のビリーを見てようやく合点がいきました。

私の友人に高スペックイケメンの独身男性がいるのですが、出会ってから約10年、ポロリと零した言葉の中に彼の本音を見ました。既にアラフォーにさしかかっている彼ですが、最近つまらない、夜遊びがしたいと言います。しかし体力は年相応に落ち、周囲は家庭があるため昔ほど付き合ってはくれません。これは、この映画の中でビリーが友人たちに告白した「老いへの恐れ」や「昔好きだった女性の死が受け入れられなかったこと」と同じです。時間は容赦なく過ぎているのに、意識は若々しい過去の中に取り残されているのです。ちなみにこれは女性でも同じで、やはりアラフォーの独身女性にこう言われたことがあります。「歳を取っていく自分が受け入れられない」と。

モテ男が結婚しないのは、理想が高いというより心のどころかにピーターパンが眠っているからでしょう。特に美しいものを好む人は、この罠に陥る可能性が高いと思います。
この映画のビリーは、正にその山を乗り越えました。世間からすればだいぶ遅い気づきかもしれませんが、そうした本音を吐きだし、自分自身も受け入ることができたのは4人の友情があってこそ。もしこの結婚を機に4人が召集されなかったら、ビリーはずっとその本音を隠したままこの先も生きていくことになったでしょう。

グループ友情は色褪せない青春の証

そうした部分を踏まえると、やはりこの作品のキモは友情といえます。友情がテーマとなるストーリーは親友メインの場合が多いですが、このような複数人グループでの友情でしか描けないことってありますよね。それこそが青春なのだと思います。

青春というと若かりし頃の特権という感じもしますが、大切なのは「誰と何をしたか」ですよね。大人になると段々と付き合いも薄れ、ビジネスライクなやりとりが多くなったり、その時々の希薄な付き合いが増えたりします。学生時代から付き合いがある友達でも、こうしたグループでの友情を維持するのは簡単なことではありません。難しいけれど、そうできたらいいなという思いがある。だからこそこういったストーリーは愛されるのでしょう。スポーツものやヤンキーもの、学園ものなどが王道として君臨し続けるのはそこに友情という青春があるからです。

この映画は「シニア青春もの映画」といっても過言ではありませんね。現状に目を向けるようになったビリーと仲間達は、この先もずっと友情を維持して青春を謳歌することと思います。
自分が70歳になったとき、こんな素敵な友情が手元にあるだろうかと考えると正直かなり心許ないです。けれど、この映画のように長年こじれた仲も何かのキッカケで修復できるかもしれません。そのチャンスは今じゃなく遠い先にあるかもしれない。可能性はいつでもゼロではないのです。
その時々の青春を謳歌できるように、友達は大切にしたいものですね。そして年老いてもたまにはハメを外せたりなんかしたら人生最高です!

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他のレビュアーの感想・評価

ハイテンポコメディーではない

ターゲットをしかと意識した作品「ラストベガス」というタイトルからふざけ半分のコメディー的作風を想像していたが、思ったよりも真面目な作品だった。まず、何よりもあのラスベガスを舞台にしているにも関わらず、あまり騒がしくなく、過激でもない。逆にテンポののろさを感じてしまったぐらいである。しかし、そのややスローテンポで、過激をやりすぎない作風の意図は、この作品が四人のお年寄りの話であるだけに、観る人もそのお年寄り世代をターゲットにしているからである。四人組のうちビリーのみが独身を貫き、遂に結婚をするという構図。序盤は華やかな感じに描かれるビリーと、それに対して他三人が第二の人生を活気なく生きているのが対象として描かれている。この二本軸の人生で大体のお年寄り世代はどちらかに感情移入できるようになる。一見するとビリーの生き方がいいように見えるが、物語が進むにつれビリーもビリーで問題を抱えているのが...この感想を読む

3.03.0
  • masanosukemasanosuke
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