ツッコミどころ満載の将来心配なふたり
一目惚れの出会い
イタリアローマに傷心旅行に出かけていた香純は、フォロロマーノで発掘作業のアルバイトをしていた由貴(よしき)と出会う。どこを好きになったんだかさっぱりだから、一目惚れってことで片付けたいと思います。香純が傷心旅行で悲しげで、自由奔放でかわいらしい。守ってあげたくなったってことで、本能のままに行動した結果、ということでいいだろうか。しかし、ここで疑問に思ってしまうのは、一夜限りのお付き合いと言って、由貴は彼女がいるのに香純に手を出したことになる…よね?すでに恭子さんや教授とお知り合いだったはずだよね?うわー一目ぼれの運命的出会いだったらなんでも許されんのかい。1回だけだったらなかったことにしたっていいのかい。恭子さんの立場がないよね…考古学のためだけにお付き合いしてたんじゃない?男ってやつはなんでこうなんだ…目の前に素敵な女性が転がっていて、好みドストライクだったら、手を出すんだろうか…香純のほうは別に誰かとお付き合いしているわけではなくて、好きだった相手にフラれてやけになっててやっちまったってことで、多少の同情はしたいと思いますよ。相手に彼女がいるなんて知らなかったわけだしね。
ところでいったい一目惚れってどうすればできるんだろう?相手の素性が知れないうちは、怖くて全然関われないよ…カッコいい人だな~かわいい人だな~くらいで限界だよ!そんで、一夜限りってどうやるの?もっと自分を大事にしておくれよ!
姉と弟の垣根はとうに超えた
そして香純は日本へ帰国。親同士の都合で、幼いころに親が離婚して離れ離れになっていた弟と一緒に暮らすことに。そこで弟が由貴だったと知る…うわー怖いよね、この展開。これぞ運命。出会うべくして出会ったんだね。
そのあとの母親やお互いの取り巻きの反対がものすごかった。とにかく執拗に離れさせようと迫ってくる。そんなに一緒にいたきゃ、自由にさせてやればいいんじゃないの?って声をかけたくなるくらい、周りが本当に執拗。いやいや、もうすでに一線超えちゃった間柄なんだよね彼ら…そして、香純や由貴自身もけっこうひどいと思う。まさに、「他の男に抱かれながら違う男の夢を見る」という懐かしい昔の曲の歌詞の通りだね。お互いに香純・由貴を想いながら違う相手と体を温めあう。なんですぐ体の関係で何かを埋めようとすんのかな。もっとできることいっぱいあると思うよ。男女で分かり合うには体の関係しかないのかな。ホイホイ簡単に体を許しているような気がしてならないんだよね。この物語読んでいると。そしてこれが大人のお付き合いの方法なんだと子どもに知られたくないというか。こういう関係のやり取りが大人だとか考えられたくない。もっと知的だったり高尚な関係だってたくさんあるねん。大人だからいっぱい迷ったり、簡単に心も体も許せなかったりする、その苦しさがいっぱい考えられる大人ってもんだと思わないかな?本能のまんまで怖すぎるんですよ、この物語に出てくる人間たち。
執着しすぎて怖すぎる女と男
まず恭子さんですけど、もう怖い女の典型。あなたを愛しているのは私で、あなたが愛しているのも私でしょ?みたいな。あなたのやりたいことを叶えてあげられるのは私だけなのに、なんで違う女のところに行くの…?しかも実の姉のもとに…え、由貴ってこんなやつだったの?まじこの人無理なんですけど…って離れることもできたはずなのに、最終巻までずーーっと執着し続けるからね、彼女。あの手この手、相手が嫌がる・悲しがることで徹底的にいじめまくり、由貴を動けなくさせて自分のもとに…ってもう何のために付き合っているのかわからないよそれじゃ。好きなんじゃなくて、自分が裏切られることが許せないっていうプライドの塊みたいな女だった。そして、
あなた達2人が望んでも手に入らないものをもらいます
って子ども妊娠しました嘘ついて、階段から突き落とされましたと嘘ついて、昏睡状態になった由貴をいいことに自分と一緒に死にましょうでまさかの2回目の心中を…いやいや、もはや何のために由貴は、あなたはいるんですか?それで人生終わりなんですか?
一方の和樹。彼はずっと香純が好きで、ずっと香純と恋人になりたくて、焦って体を奪ってみたり、親に連絡して由貴と香純の関係を暴露してみたり…いろいろやってました。だけど、香純の寂しいときに体を貸してやり、支えになってやってました。がんばって。そして香純をかばって事故で死んじゃうんです。あ~…香純って…罪な女。だいたい、由貴だけ想って体は誰かほかの人に…ってホントやめてほしいんだよね。どんだけ軽い女なわけ?振り回される側の気持ちにもなろうよ。香純は和樹を自分の都合のいいときだけ利用していたんだよ?そして死んじゃったんだよ…?
母親と安藤簾の恐怖
一番怖いのは母親と安藤さん。母親は、やっぱり自分の子ども同士でそんな関係になるなんて、いったいどうして…?って思っちゃうよね。血がつながっていれば安心よね、ってことないんだよ。というかね、ずっと会ってない兄・弟とかって全然他人に思えるんですよ。これは体験談になりますが、歳の離れた兄弟で全然一緒に暮らした記憶がないと、正月とかにたまに会うとけっこう緊張するし、血がつながってるってわかんないもんなんです。親にとっては子どもでも、子ども同士では全然そんなことなかったりするのはしょうがないって思うんですよね。ってことはですよ?結局は親同士の離婚のせいなわけよ。自分で蒔いた種なわけよ。
そして。もっとも恐怖の相手が安藤さん。安藤さんは由貴と香純の母親である由香さんが好きで、それが叶わないと分かっているから、由香さんの血が混ざった香純と子どもを作ろうとする…っておいおい。香純は香純。由香さんは由香さんなんだって。血が混ざってるとかそんな理由で強姦まがいのことする?っていうかね、ここでも一番軽率なのは香純なんですよ。和樹失って由貴ともどことなくぎこちなくて、愛が欠片もなくて楽だから安藤さんとの関係に走るという…おいおい、あんたどんだけ尻軽なの?!いや、罠に落ちたんだけどさ、全然もう…理解できないよ…狂おしいほどに好きなら、もういいじゃん。姉とか弟とか、気にしてるような段階じゃないよここまできたらさ。だから今さら悩まず、さっさとどこか誰も知らないところへ行ったほうがいい。
うんざりするほど愛してる
香純を好きにならない幸せよりも 香純を好きになる罪を選ぶよ
これが物語のメインテーマ。姉を、弟を愛することは罪ですか?倫理的にはアウト。血が色濃くつながった姉弟なんてもってのほか。絶対に他人には教えられない。だけど、静かに誰にも伝えずに、一緒に暮らしていってもいいよね?誰にも迷惑なんてかけないから、許さなくていいから、どうか二人で生きていかせて…余計なこと全部取っ払って、やっぱり一緒にいることを選んだ二人。で、最後の由貴パスポート事件は…唖然。まさかそんな方法でね~…パスポート盗んだやつマジ災難ね。顔つぶされてて誰だかわかんないってところで、パスポート持ってたからその人にされて。そして勝手に焼かれてお葬式。盗んだ人にも人生があっただろうに、盗みなんか働いてしまったばっかりに…禁断の愛のお手伝いをしてしまうとは。恐れ入りました。二人の出会った地、フォロロマーノでひっそりと生きていく。誰にも邪魔されずに。誰にも知られずに。
最後まで邪魔されまくって、離れたりくっついたりをさんざん繰り返して、結局本能のままに生きることを選んで、よかったのかどうかはさっぱりわからない。それでも今生きている幸せをかみしめたい…そんな現実をみない二人の逃避行を延々と見せられ続けましたね。なんか自分もうんざりした…なんか自由だよね、人って。
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