矢野と高橋の結末は素直に感動 - 僕等がいた 後篇の感想

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僕等がいた 後篇

4.004.00
映像
3.83
脚本
3.67
キャスト
4.33
音楽
3.83
演出
3.67
感想数
3
観た人
5

矢野と高橋の結末は素直に感動

4.54.5
映像
4.5
脚本
4.0
キャスト
5.0
音楽
4.0
演出
4.0

目次

薄暗い部屋でケーキに火をつける矢野から始まる

暗い部屋、黒の服、誕生日ケーキ…そして意味深な

記憶を失った者に未来はない

というメッセージ。惹きつけるね~。大好きだった高橋に連絡もできずに消息を絶った矢野。いったい彼はどこで何をしているのか?ラブストーリーのはずなのに、物語始まりにこれだけ暗―く始まるのも特徴的ですよね。前編を見ている人には待ってました!と言わんばかりのお話の始まりでしょう。

一方の高橋は、前編での宣言通り、東京の大学に合格して就活の真っ最中。そして隣には竹内くん…竹内くん?!!なんと高橋を付き合うことができていた竹内くん!!すごいところにまで昇格していましたね。いったい何がどうなったらそうなるのか…これだけ消息がわからなくて、でも心ではずっと矢野を待っていて、それでもいいからって甘い言葉ささやかれて竹内くんと付き合って…他の人想いながら付き合っちゃいけないよ!!そこはどうにかならなかったのかな…確かに原作もそんな感じだけど、もうディープすぎて悲しくなってきます。実際、そういう付き合い方をしちゃったらダメだと思うんですよ。大事に想えない人と一緒にいるなんて、お互いに悲しすぎるじゃないか!!後半のほうで高橋は竹内くんの決死のプロポーズをお断りするけれど、そしたらもっと前の断っておけよ!なーなーにするなよ!寂しいからって男を利用するなよ!竹内くんがそれでもいいからって言ったんだろうけどさ、そこは譲るな!…と、言いたくなりますね。ピュアに見えなくなります。最終的には、プロポーズされてから、竹内くんにいかに甘えて生きてきたのかを反省し、自分一人でも、矢野を思い続けながら生きていく覚悟決めてくれましたけど、人間って弱いよね。甘いものに弱い!このお話ではそういうダメなところも包み隠さず見せてくれます。

矢野が消息を絶つまでのお話

一番好きなシーンは、矢野が亜希子に高橋の写メを見せるシーンですね。東京にきて変わらず人気者の矢野だけれど、絶対に彼女が一番大切で、それを譲らない。そんな姿がよかったなー完全に人を好きになることに臆病になっていた矢野が、ここまで明るくなってくれたのは高橋のおかげですから。亜希子のポジションもいいです。こういう友達が1人いると違いますよね。まさに北海道での竹内くん!最高のお友達!

でも矢野は末期がんになって仕事もままならなくなった母親の代わりに、バイトをしなければいけなくなった…勉強して、バイトして、家事して、母親を助けて…そしてどんどん追い詰められていく。こんな高校生いていいんでしょうか。でも世の中にはこんなこともあるのかもしれないですよね。親戚も頼れない人だってきっといる。自分一人で生きていくってどんなに大変か、そういうこともこの映画ではみせてくれています。

そして矢野が高橋に会いにいこうと決断したときに限って…母親が自殺っていうね…どんだけディープなんだよ、いたいけな男子高校生の心をぶち壊すには十分な出来事だったというわけです。自分が大切にしたいと思うものは壊れてしまう。それならもう誰も愛さないし、愛されようとも思わない。そういう気持ちが伝わってきました。完全に殻にこもったこじれ男の出来上がりです…そして冒頭のシーンにつながるんですよね。はじめは何のことだかわからなかったけれど、ここまで見てきてようやく、高橋の誕生日を祝ってあげられなかった自分、そこにすべて置いていこうと決めた矢野自身の心、その決意の意味があったんだなーとわかるんです。うまいですよね、この構成。

まさかの山本有里が矢野を救う

まさか山本さんが矢野と一緒に暮らしているとは思いませんよね…しかも地元ですよ?なんて灯台下暗し。東京探しても見つからないよ!

私のことを憎んで憎んで…そして時々愛してくれるの…

うーーんこのセリフ、相当深い。どれだけねじ曲がった生活しているんだろうって想像ができちゃう言葉です。完全に矢野の心は山本有里とその母親との件によって追い打ちかけられたんですよね。自分が救えなかった母親の姿と重ねて、何をしてあげるわけでもないけど、ただそばにいることを選んだ。有里のほうは矢野の事が好きだったし、一緒にいたいと思っていたし、罪悪感がありながらも彼を手にいれることができた自分を誇らしくも思っていたりして、すごい複雑でした。小さなころから姉と比べられて、さげすまれて、好きになった人もとられて、母親からも憎まれ口叩かれるし、根性まがって当たり前です。もう自分が子どもを育てるときは、どんな子でも、最大限の愛情をもって育ててあげたいと思っちゃいました。こんな思いはさせたくないって。だから、この映画は、高校生とか若い世代だけじゃなくて、これから子どもを育てていこうっていう大人女子の自分たちにも、考えさせてくれるものが多いです。

3年前にすべてを知った竹内は、矢野の望みの通りに、すべてを隠して高橋を幸せにしていこうと誓うわけだけど…やっぱりそうはいかないよね。

6年経って初めての東京デート

これは…最初で最後の二人のデートだということで、いいシーンでしたね~微笑ましかった。高橋はずっと矢野を待っているのに、矢野は高橋を手放そうとしている。手放そうとしているなら、もうしょうがないってやっと高橋はこの段階で納得して、正式な別れを決めるんですよね。そして竹内くんとのあいまいな関係にも終わりを告げました。もっと早く終わっとけやと思いましたけれど、そこでようやく竹内くんも目が覚めて、矢野を責める!ここももっと早くやっとけや!!と思ったけれども!高橋を幸せにしたいからお前に頼んだんだって言ってるけど、高橋は矢野じゃないと幸せじゃないんだ!!!ってやっとここで言えた…高校生のときからずっとわかっていたことだった。だけど俺だって高橋のこと大好きだし、幸せにする自信があったし、矢野の事さえ忘れてくれたら、絶対勝てると思ってた。それがプロポーズ失敗でガラガラと崩れ去り、やっと目が覚めたんだろうなーっと思います。二人の呪縛から。もっと自由になっていいんだって。だから、亜希子とくっついてくれた描写は本当に本当に良かったと思っています!絶対そのほうが幸せになれるよ!

ラストは原作よりもわかりにくいけどハッピーエンド

原作では野原みたいなところで言葉を告げますが、映画では廃校になることが決まった懐かしの高校の屋上でした。矢野が高橋の書いたノートを机の中から見つけて…っていうのはできすぎ感がハンパないと思いますが、これのおかげで矢野の気持ちは固まったんだろうなというのが察しがつきました。きっとこの地に戻ってくるまでは、山本有里との関係性は終わりになったけれど、高橋のことをもう一度追いかけたいというところまでは心が追い付いてなくて、迷っていたのではないかと。でもノートに書かれた物語を見て、いかに高橋が矢野の事を想い続けて生きてきたのかとか、自分も幸せになっていいのかもしれないとか、初めて考えることができたんだと思います。「自分で自分を苦しめるのはもうやめよう。全部捨てても自分の手の中に君が残るなら…」みたいなフレーズを思わず想像で自分の頭の中で再生してしまいました。なんか流れてきそうですよね、そういうの。

こうして終わった高橋を矢野、それを取り巻く人たちの物語でした。はじめの甘酸っぱさはいったいどこへ行ったのだろうというくらい、後半はだいぶ暗いのですが、考えさせられることも多いし、キャストも最高な物語です。

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吉高さんと生田さんがとにかく良い「僕等がいた」は人気少女漫画の実写化である。行ったり来たり迷いながらやっと通じ合ったと思った矢野と高橋。これからはそれを育み大きくしていくだけ…そう思っていた矢先、矢野の転校が決まった前半の映画。前半では少女漫画らしい、女は自分を裏切るという不信感から動けずにいた矢野を、純粋すぎる高橋が癒してくれる物語であった。たいてい漫画とのギャップを感じてぞわぞわしてしまうのだが、この作品はまったく別。吉高さんの高橋七美役は、不器用だが純粋で優しいところ、自然体なところがよく合っていたように思う。また、生田斗真さんの矢野元晴もまた、影のある迷える男子をよく演じており、チャラさも女の子へのあつかいも、実に心くすぐるものだった。後編では、高橋も矢野も社会人となり、消息不明となった矢野のことをずっと待ちながら、約束の地・東京で就職活動をしている高橋の姿を映すところからスタ...この感想を読む

4.54.5
  • kiokutokiokuto
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