困難な仕事を楽しくする方法
展示物が夜動き出すのに、不気味ではない自然史博物館
日が落ちると展示物が動き出す美術館なんて、一見ホラーとしか思えないでしょう。しかし、ここの美術館がホラーとならないのは、展示物たちが自分たちを実際に存在しているものとして考えているからかもしれません。彼らは大半が人形ですが、オリジナルの記憶を持っていて、その記憶に即して行動をしています。彼らにとっては夜が自分たちの生活する時間帯で、昼は眠っている時間帯という感覚なのでしょう。
前任者の三人は、彼らに対してマニュアルをつくっています。それは彼らを一個人として扱うのではなく、一展示物として扱っていたのではないかと思わせます。マニュアルを介して展示物と接することで、毎日の警備を問題なく過ごせるようにしていたのかもしれません。それはラリーに警備を引き継いだ時に、彼らに直接引き合わせたり、説明をしなかったりしたことからもそれはうかがえますが、展示物たちが自分たちのテリトリーだけの認識しかなく、前任者のことについて何も聞かなかったことからも容易に想像できるでしょう。
ラリーと展示物たちの交流
仕事初日にマニュアルをデクスターによって、破られてしまうラリーですが、それは結果的には良い方向に彼らを導きます。最初は自分なりのマニュアルを作ろうと、展示物たちの歴史背景や人物像を調べていたのかもしれませんが、それは彼らを理解するための材料となっていきます。初めて接する人に対し、血液型や星座・趣味などを知ってコミュニケーションをとろうとするのと同じで、相手の基本的な考え方などのパターンを知ることで、マニュアルがなくてもスムーズに彼らと関わることができたのでしょう。
警備の仕事としては前任の三人の方法が、問題が起こる可能性は少なくてすむのかもしれません。展示物たちの意見を尊重し自由を与えることは、博物館の外に出られてしまったり、たとえ博物館の中だったとしても、朝になっても自分たちの場所に戻ってくれなかったりといった問題が起こる可能性は高くなります。実際に博物館の中をめちゃくちゃにし、ラリーもクビになりかけてしまいます。しかし、ここに展示されている者たちは歴史的にも偉業をなした人物をもとに作られています。オリジナルではなくてもそれには敬意を払うべきことではないでしょうか。ラリーが問題を解決できたのも、彼らのことを理解して信頼し、人形やレプリカということで下に見て命令するのではなく、彼らができることに対して協力をお願いしたからでしょう。
最低の父親から最高に父親に
ラリーは転職や転居を繰り返していて、息子のニックにとってあまり模範的な父親とは言えない存在です。いつまでも夢だけを追い、成功しないのは周りが自分の才能を理解してくれないからだと考えています。今回も初日でやめようとしますが、ニックに博物館の仕事なんてすごいと言われて続けることにします。ラリーにとっては、息子の期待を裏切ることの方が嫌だと思ったのかもしれません。
ラリーはこのことをきっかけに、博物館を案内すると言ったり、自分の仕事ぶりを見せようと夜の博物館にニックを連れていったりしますが、どれも空振りになってしまいます。そこには仕事を利用して、ニックの尊敬を得ようとするラリーの下心ゆえの結果だったのかもしれません。子どもが親に対し尊敬を持つのは、自分の親がみんなから認められるような仕事をしていたり、人にはできないような仕事をしていたりするからでは決してないと思います。父親が高収入で、いつもいいスーツを着て、人からうらやましがられるような仕事をしているというのも、もちろん尊敬できることの一つではあるでしょう。また、好きではない仕事でも、自分たちのためにがんばって仕事をしてくれている姿も尊敬できるかもしれません。しかし一番は、自分の仕事に対してやりがいを感じてしている姿を見た時ではないでしょうか?
仕事を楽しく勤める方法
仕事というのは楽しいものではなく、一生懸命勤めることだというのが一般論でしょう。しかし、一生懸命勤めるだけでは誰もが仕事に対して、嫌なイメージしか持たなくなってしまうのではないでしょうか?
ここ「ナイトミュージアム」は、普通の仕事とは全く別の意味で困難な仕事だと言えます。しかし、ラリーを見る限り困難だけではなさそうです。最初はあまりに大変な仕事のためいつものように投げ出そうとしますが、自分なりにその困難を対処していくことで、徐々にやりがいを感じていたのでしょう。ラリーのように自分の仕事に対して、誰もが全部自分のやり方で進めることができるわけではありません。しかし、その中でも少しでも自分がやりやすい、テンションをあげて仕事をする方法を見つけることはできると思います。ラリーのように自分が楽になるように、また少し遊び心を加えたりすることで、仕事が困難なものだけではなくなるかもしれません。
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