品のあるワイヤーアクションと三角関係がムードを作る傑作
基本的に悲しいムード
物語の舞台は、19世紀初頭です。時の武術の最高峰に君臨するムーバイは伝説の剣を収め、自分の師匠を殺した仇打ちもあきらめようとしていたという前提です。ところが剣を収めた先で、剣が盗難に遭ってしまいます。調べると、剣は敵の弟子で、貴族の娘の仕業だとわかります。ムーバイとその女弟子で心では愛し合っている中であるシューリンは、その娘の技を見て、ムーバイの弟子にしたいと考えるようになります。なんとなく三角関係っぽさが醸し出される展開でした。
そのあとは、前の師匠や、恋の相手などいろんなしがらみが錯綜して物語は展開していくのですが、基本的には「悲しい」映画ですね。チョウ・ユンファが重鎮ぽい抑えた演技を見せ続けます。クールでセクシーです。
落ち着いたテンポと品のあるワイヤーアクション
このムードは映画全体についても、いえます。落ち着いたテンポと派手派手しくない映像、すばらしいアクション(ワイヤーアクションの連続ですが、なぜか心奪われます)、音楽がなんとも哀愁を誘い、映画のトータル的に申し分ない作品に仕上がっています。
ただ、ストーリー的には各所各所で詰めが甘い感があります。これは故意にかもしれませんが、尻切れトンボ感を受けます。敵討ち、恋の成就、術の継承、などなど、結局、何がストーリーの中心となるレールなのか、後から考えてもわからないし、それらの絡み合い方もうまくいっているとは言えない気がします。
しかし、しかし、そんなことはささいなことだとは言いきれるぐらいにこの作品は魅力があります。コミカルに行かずに、品のあるワイヤーアクションと映像と音楽でもう充分、素晴らしい作品です。敵と味方、戦闘の対峙のアクションを品良く、「うそ」と言いたくなるような妙技もおりまぜ、ワクワクしました。
三角関係が作品のムードを作る
同種の映画で、チャン・イーモウ監督のHEROとか、ありますが、私はどちらかというとこちらの作品に魅力を感じます。音楽やアクション(の占める重要度)に共通性がありますが、HEROは派手で、色彩の映画、この映画は悲しいムードの映画とでもいうべきでしょうか。
私的に気になったのはチョウ・ユンファは、チャン・ツィイーを好きで抱きたいと思っているのではないか、それをミッシェル・ヨーも感じているのではないかということです。結局、映画の中ではそれがわかる部分が出てきませんが、目に見えない微妙な三角関係がこの作品のムードを作っているのかなという気がしてなりません。
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