創造的で個性的で、刺激的な作品
史上最低・最悪の監督の愉快な作品
史上最低・最悪の監督と呼ばれたエド・ウッドの映画作り、資金集め、発想、楽天ぶりなどを愉快に描いています。ある意味めちゃくちゃ独創的(エド・ウッドも、この映画も)だと思います。エドが憧れの吸血鬼スター、ベラ・ルゴシと偶然会ったことで、彼を重宝し、彼にこだわった映画作りを展開していくのですが、これ、と思ったものはどんどんキャストに加え、そのアイディアはどんどん取り込み、パンパンパンと撮影を進めていく。(このバンバンバンぶり、軽さは笑える)「本当にいいのか、悪いのかわかっているんだろうか、この監督は」という客観的な懸念が起こるだろう雰囲気を見事に表現しています。案の定、いつも非難ごうごうでバッシングを受けるのですが、ルゴシの遺作となった「原子の子」が認められたところで物語が幕を閉じます。つまりは、やはりエド・ウッドは優秀な監督だったのだという証明のように。
美しいモノクロ映像
映像がモノクロで雰囲気満点ですね。この監督ならではの映像美。モノクロなのにカラーみたいというか、芸術的なモノクロというか、イロっぽいモノクロというかおしゃれなモノクロというか、一味も二味も違うモノクロ映像です。クレジットにも趣向(墓石に名)がこらされて、のっけから「うわ」と思わず口に出てしまうような抜群の展開。
ジョニー・デップの演技が乗りに乗っていて、まさに本当のエド・ウッドそのものを思わせます。キレがあり、台詞回しが饒舌で、ジョニー・デップというのはかなりの演技者なんだなとわかります。(寡黙なジョニー・デップもなかなかいい味を出すのですが)
全編を通した超個性エド・ウッドのユーモアが冴える
全編を通して、ユーモアが漂い、この監督の作品では一番好きかもしれません。効果的な音楽と美しい映像で、しっかりとコクと切れのある作品に仕上がっています。物語には正直、切れはありません。食い散らかして進んで行く感じです。発散、拡散、それでも笑って進んで行くみたいな。なんだろうとその時いいと思ったらいい、と進んで行くこの主人公の設定が魅力満点です。
実在の人物もこんな風だったとしたら、実在の人物そのものに魅力があるのかもしれませんし、見事にデフォルメした監督とジョニー・デップの勝利かもしれません。見てよかったとつくづく思います。創造的刺激も与えてくれます。とにかく、伝記的映画とは言え、目のつけどころがいいとでもいうんでしょうか。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)