俺はまだ本気を出してない - Life ライフの感想

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俺はまだ本気を出してない

5.05.0
映像
5.0
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
5.0
演出
5.0

目次

全パッとしない男性の願い

初めてこの映画を見た時の感想は、「とにかく男の夢がぎっちぎちに詰まってるなあ〜」というものだった。

この映画では、男の夢が全て叶っている。

いや、男の夢というよりは、まるでジャンプの少年漫画のような、男の子の夢と言った方がいいだろうか。

なにかものすごく全男性のピュアな部分を揺さぶる映画なのだと思う。

友情•努力•勝利

主人公は、真面目•地味•堅実を体現したような42歳独身のウォルター。

しかしそんな彼は、管理しているフィルムの紛失というトラブルから伝説の写真家、ショーンに会いに行く事になる。

ショーンは何枚もLIFE誌の表紙を撮ってはいるが、携帯電話も持たず世界中を飛び回り、連絡は思うようにとれない。

しかしウォルターの仕事はとても評価をして、信頼をしてくれている。

ショーンに会う為にはグリーンランドまで行かなければいけない、という事をヒロインのシェリルの力を借りて割り出し、ウォルターの旅は始まる。

今までウォルターは夢想家で、オフィスや駅でパッとしない現実から逃避する為にたびたび妄想の白昼夢を見ていたが、グリーンランドでヘリに飛び乗る瞬間、自分を応援する歌を歌うシェリルの姿の白昼夢を見る。

シェリルの歌に背中を押され、飛び立つヘリに飛び乗り、地上から見上げるシェリルはショーンの見ている中、ふっと夢のように消える。

そしてこれ以降、ウォルターは現実逃避の為の白昼夢は見ない。

自分の持っていた「白昼夢を見る」という特性を、最後に自分が一歩を踏み出す為に使って、そして同時に白昼夢を見る自分に別れを告げる。

そうして、少年漫画の主人公が徐々に強くなって行くように、ウォルターも徐々に強い男へとステップアップしてゆく。

元々持っていたもの

そこからアイスランドに向かい、妹のくれたゴム人形とスケボーを交換し、得意のスケボーでショーンを追いかける。そして結果アイスランドではショーンに会えず終わるが、ショーンに会う手がかりが父の形見のピアノから発見される。

そして父の形見のリュックと旅道具を持ち、アフガニスタンの高山に向かう。

途中、道を塞ぐ部族軍長には母親の焼いたケーキを分け与えて通してもらう。

その雪山をはるばる登って、やっと写真家ショーンに会えるのだがネガはもともと貰っていた財布の中に入っていた。

その財布は捨ててしまった筈なのに、母親がゴミ箱から拾ってとっておいてくれていた。

特徴的なのは、問題を解決する為に必要だった道具やスキルは、途中で手に入れるものではなくて、全て元々持っていたものと家族からもらったものだと言う事である。

ウォルターは、アイスランドの道路を疾走する為にスケボーを習得したりはしない。

高山には生まれて初めて行くと思うが、登山法の勉強をしたりトレーニングをしたりもしない。

徹底して、自分の肉体と家族からもらったものだけで切り抜けていく。

これは「ウォルターは自分や周りは気付かなかったけど、それくらいすごいものを実は元々持っていた」という事である。

そして主人公と写真家ショーンは全く別の人物として書かれているが、実はこれは同一人物と見る事も出来る。

真面目•地味•堅実そのものの生活を送るウォルターの理想と憧れを体現したのが実はショーンで、「現実のパッとしない自分」が「理想の自分」を追い求めて成長しながら近づいてゆき、最後に理想の自分と現実の自分が相見え、その2人が融合し、現実社会に戻った時は前の自分よりも成長していて新しい自分の生活とヒロインを手に入れる、というメタファーにも見える。

そうやって元々持っていた物を捨て、人の力を借りて成長をし、最後には新しい生活とパートナーを手に入れるウォルターの姿は、何度も戦い、死に、蘇り、武器を手に入れ、魔物を倒し、ヒロインと国を手に入れ、最後に神になるヘラクレスや大国主命のような神話に登場する英雄にも重なる。

多分、太古の昔から英雄譚とはそういうもので、この映画も現代風の英雄譚のひとつなのだと思う。

神話的で、少年漫画的で、とても映画的だと思う良作。

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4.54.5
  • もとどんもとどん
  • 81view
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