勇気を出して一歩を踏み出したくなる、LIFE!から考える人生の変え方 - Life ライフの感想

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勇気を出して一歩を踏み出したくなる、LIFE!から考える人生の変え方

4.54.5
映像
3.5
脚本
4.5
キャスト
5.0
音楽
3.0
演出
4.0

目次

妄想癖の冴えない男ウォルターは自分自身

世間では良く「人生にIFはない」などと言われますよね。確かに終わったことにいつまでも執着して現状を否定するのは良い事ではありません。しかし数々の選択肢について想いを馳せること自体は、そう悪いことではないような気がするのです。

この映画の主人公ウォルターは妄想癖があり、日常のなにげないシーンでこの妄想を爆発させています。実行に移さないので当然それは妄想で終わってしまうわけですが、その姿は第三者からすればとても滑稽で、まさに「厨二病」といった具合。でもそんなウォルターを笑うことができる人なんて実はそう多くないのではないかと思うのです。

私自身「こうしたらどうだろうか」と思いつつも悩んだ末に行動しないことが良くあります。その理由の一つは勇気がないからですが、もう一つは変化を恐れ現状維持しようとする心理作用・現状維持バイアスが働いているからです。つまりこれは現状の方が安全で心地良いという「安心感が勝った結果」なのですよね。冴えない中年男性であるウォルターが壮大なヒーロー妄想をしながら行動できない理由もまさにそれです。

しかしここで考えたいのは、日常の中で出会う「IF」やウォルターのヒーロー妄想は無意味なのかどうかということです。実行に移さないなら意味がなさそうにも思いますが、この映画の中で後にウォルターが本当に大冒険をしてヒーローとなってしまうことを考えれば、常日頃のヒーロー妄想こそがその現実を彼に運んできたとも考えられますよね。実際、脳の神経組織RASは意識したものだけ情報として入ってくるようにしているといいます。つまりウォルターの妄想は無意味などではなく、逆に自身の人生に対する大きな効果を生んだのではないかと思うのです。

人生を変える為に必要なこととは?

私はこの映画を視聴し終えた後、他の映画ではなかなか感じられない爽快感を覚えました。なにより感激したのはウォルターがリストラをものともせず自分の道を歩み始めたことです。もし25番ネガを探すという大冒険を経ていなかったら、ウォルターはリストラという現実に肩を落としたままだったはずです。

主人公がリストラされるというのは色々な映画で見られる展開で、大体そのタイミングで大仕事をしそれが転機となって人生が変わったりします。この映画でもウォルターはリストラを機に一回り大きく成長を遂げたわけですが、人生が飛躍的に成功したかといえばそうではありません。それこそがこの映画の重要なポイントの一つだと思うのです。
この映画は分かりやすいサクセスストーリーではありませんが爽快感があります。それは視聴者側の「人生は変わらない」という日常に潜む諦めを解放してくれるからです。

ウォルターの人生が変化するキッカケとなったのはリストラですが、実際に何が彼を変えたかといえば25番ネガ探しの大冒険、つまり行動ですよね。なぜそこまでして25番ネガを受け取りにいったのか。それは彼がその仕事に対して熱意があったからで、そうせざるをえない状況にもあったからです。

この世には、人生を変えたいと願っているのに行動できないという人が沢山いると思います。そういうとき、ヤル気が足りないと言われればそれまでですよね。ならば、ウォルターのようにそうせざるを得ない状況を作ってみれば良いのです。まずはそれを妄想して、その状況を呼び込むのです。
考えなければ、行動しなければ、何も変わりません。しかしこの映画は逆に、そうしてみれば変われるのだということを教えてくれます。

本当は誰だってヒーローになれる!

ストーリーの核となる25番ネガに映っていたのはいつも通りの仕事をこなすウォルター自身、つまり妄想癖の冴えない中年男性そのものでした。ただしその男は仕事に誇りをもちコツコツと頑張ってきたのです。有名なLIFE誌の表紙を飾るということは世界的なヒーローであることと同等と考えられます。つまりこれは派手な成功譚がなくても、人生が上手くいかないと思っていても、誰だって自分の人生の主人公でありヒーローであるということが言えるのだと思います。

例え会社から不要とされても、自分を認めてくれる存在がいるというのは心強いことですよね。それはもはや財産といっても過言ではないはずです。もし会社での仕事と自分の価値がイコールになっていたら、リストラという事実を前にしただけで自分の価値を見失ってしまいます。しかしこの映画でウォルターが得たものは自分自身というかけがえのない価値です。

ところで日本の終身雇用制度は美徳の一つのように語られてきましたが、最近は崩壊してきていますよね。しかしまだまだ会社で働くことが最良とされていますし、人気の職業トップが手堅い公務員であることを考えても仕事と自分がイコールになっているのが窺えます。こういった価値観を考えると、日本人にこそこの映画は響くのではないかと思います。

LIFE誌のスローガンは心に留めておきたいですね。
「世界を見よう、危険でも立ち向かおう。それが人生の目的だから」
現状維持バイアスに負けず、考えて、行動する。それが世間の枠に縛られずに自分自身の人生のヒーローとして生きる方法です。一歩を踏み出し、「人生は変わらない」から脱却することができたら、きっとその時は同じような爽快感を得ることができるはずです。

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他のレビュアーの感想・評価

俺はまだ本気を出してない

全パッとしない男性の願い初めてこの映画を見た時の感想は、「とにかく男の夢がぎっちぎちに詰まってるなあ〜」というものだった。この映画では、男の夢が全て叶っている。いや、男の夢というよりは、まるでジャンプの少年漫画のような、男の子の夢と言った方がいいだろうか。なにかものすごく全男性のピュアな部分を揺さぶる映画なのだと思う。友情•努力•勝利主人公は、真面目•地味•堅実を体現したような42歳独身のウォルター。しかしそんな彼は、管理しているフィルムの紛失というトラブルから伝説の写真家、ショーンに会いに行く事になる。ショーンは何枚もLIFE誌の表紙を撮ってはいるが、携帯電話も持たず世界中を飛び回り、連絡は思うようにとれない。しかしウォルターの仕事はとても評価をして、信頼をしてくれている。ショーンに会う為にはグリーンランドまで行かなければいけない、という事をヒロインのシェリルの力を借りて割り出し、ウォルタ...この感想を読む

5.05.0
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